9日に行われた中米エルサルバドルの大統領選挙の決戦投票は、選挙管理委員会が公式に勝者を宣言できない状態になっている。決戦投票は、左派のFMLN(ファラブンド・マルチ民族解放戦線)のサルバドル・サンチェス・セレン氏と、右派のノルマン・キハノ(元サンサルバドル市長)の間で行われた。
得票率は、サンチェス・セレン氏が50・11%、対立候補のノルマン・キハノ氏が49.89%の僅少差だった。このために選挙管理委員会は、開票結果を再検証している。
ただ、10日付けのNew York Timesは、サンチェス・セレン氏のリードが覆ることはないだろう、との選挙管理委員会の談話を伝えている。
FMLNは2009年の大統領選で初めて勝利したが、この時のマウリシオ・フネス大統領は、ジャーナリストでFMLNのメンバーではなかった。今回、出馬したセレン氏は、内戦(1980年?92年)を戦ったFMLNのメンバーである。
◇塗りかわる政治勢力図
かつてラテンアメリカといえば、コスタリカのような少数の例外を除くと、概して軍部の勢力が極めて強い地域だった。多国籍企業の利権を守るために、米軍による軍事介入が頻繁に繰り返されてきた地域である。
ところが1998年のベネズエラ革命を機に、次々と左派の政権が誕生するようになった。しかも、かつてのように米軍による軍事介入も、ほとんどできなくなっている。
政治手法も、旧来の社会主義国とは異なり、議会制民主主義を重視しながら、徐々に福祉国家をめざす柔軟路線を取っている。
次に示すのは、カリブ海諸国を除くラテンアメリカ(スペイン語圏・ポルトガル語圏)における大統領名と政治傾向である。赤文字の大統領が、左派、または中道左派を示す。
メキシコ:エンリケ・ペーニャ・ニエト
ホンジュラス:フアン・オルランド・エルナンデス
グアテマラ:オットー・ペレス・モリーナ
エルサルバドル:マウリシオ・フネス?
ニカラグア:ダニエル・オルテガ
コスタリカ:ラウラ・チンチージャ
パナマ:リカルド・マルティネリ
コロンビア:フアン・マヌエル・サントス
ベネズエラ:ニコラス・マドゥロ?
ペルー:オジャンタ・ウマラ
エクアドル:ラファエル・ コレア
チリ:ミチェル・バチェレ
アルゼンチン:クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル
ボリビア:フアン・エボ・モラレス・アイマ
パラグアイ:オラシオ・マヌエル・カルテス・ハラ
ウルグアイ:ホセ・ムヒカ
ブラジル:ジルマ・ヴァナ・ルセフ
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