ニカラグアと香港の問題にみる米国の世界戦略の変化、武力から策略へ
世の中に氾濫している情報には、バイアスがかかっている場合が多い。いくらメディアリテラシーを身に着けていても、テレビやインターネットを通じて接する洪水のような情報に接していると、真実が見えなくなることがある。
先日、このブログでニカラグアのサンディニスカ政権が、独裁政権に変質したとする『週刊金曜日』の報道を紹介したが、これも「西側報道」である可能性が高い。もっともわたしは、現地を取材していないので、推論でしかないが、まったく別の見方もあることを紹介しておこう。
キューバ、モンカダ兵営襲撃事件から67年,
フィデル・カストロらがキューバ革命の狼煙をあげたモンカダ兵営襲撃事件(1953年)から、7月26日で67年になる。この襲撃は失敗して、フィデルは逮捕されたが、その後、海外へ亡命した。フィデルらはメキシコで革命軍を結成し、ゴルフ場で射撃訓練を重ね、1956年12月2日にグランマ号でキューバに潜入した。
ボリビアのクーデターと国際報道
前世紀のラテンアメリカの政治を語るとき、キーワードとなっていたのが、「軍事政権」、「クーデター」、「亡命」、「ゲリラ活動」などだった。しかし、今世紀に入ってから様相が一変した。選挙により次々と左派の政権が誕生し、民族自決の流れが本格化し、これらのキーワードは過去のものとなったはずだった。
キーワードが象徴する強権的な政治と表裏関係にあったのが、多国籍企業による資源の収奪だった。それゆえに新しく誕生した左派の政権は、この問題と向き合ったのである。
特にベネズエラとボリビアがその路線を急進的に進めた。
しかし、左派の流れがいま逆流している。右傾化が進んでいるのだ。その原因を大半のメディアは左派による政策の失敗と報じてきたが、これは事実なのだろうか?【続きはウェブマガジン】
ボリビアのモラレス大統領の辞任報道、ラテンアメリカでは無血クーデター説も、メディアリテラシーを考える格好の機会
報道とは何か、情報とは何かを考える格好の機会である。
ボリビアのモラレス大統領が辞任した。そしてメキシコに亡命申請した。
メディアの報道によると、先の大統領選で現職のモラレス大統領陣営が不正選挙に関与し、国民の不満が高まり、反政府運動に発展した。そして最終的に辞任に追い込まれた。
一方、キューバのプレンサ・ラティナ紙(電子)やベネズエラのテレスール(電子)は無血クーデターだと伝えている。メキシコのロペス・オブラドール大統領やブラジルのルラ元大統領、それに1980年にノーベル平和賞を受賞したアルゼンチンの人権活動家、アドルフォ・ペレス・エスキベル氏らが、クーデターを非難する見解をツイッターなどで表明している。
わたしはどちらの情報が真実なのか、まったく判断できない。現地を取材していないからだ。
日本ではモラレス大統領の辞任しか報じられていない。一方、キューバやベネズエラではクーデターと報じられている。
チリの9・11から46年、多国籍企業の防衛と海外派兵・軍事介入を考える
「9.11」といえば、2001年に米国ニューヨークで起きた同時多発テロを連想する人が多い。日本のメディアも、18年前の悲劇を回想する記事を掲載している。一方、チリの「9.11」、軍事クーデターについては全く報じていない。少なくともわたしがインターネットで検索した限りでは、1件も発見できなかった。こちらは46年前の悲劇である。
エルサルバドルの大統領選と歪んだグローバリゼーション
3日に投票が行われたエルサルバドルの大統領選挙で、中道右派のナジブ・ブケレ氏(37)が当選した。得票率が54%で、決戦投票を経ることなく圧勝した。
ナジブ・ブケレ氏は前サンサルバドル市長(エルサルバドルの首都)で、元々はFMLN(ファラブンド・マルティ民族解放戦線)の党員だった。サンサルバドル市長の時代にFMLN内での対立が激化して、今回の大統領選では、保守・革新の2大政党とは距離を置いて、第3政党として出馬していた。
投票前の世論調査の段階から、圧勝が予測されていた。
ホンジュラスの移民キャラバン、背景に歪んだグローバリゼーション
中米ホンジュラスから米国・メキシコの国境に難民が押し寄せている。メキシコ側の国境の町、ティファナだけでも約5000人。国境へ向かって北上中の人々がさらに5000人。海外メディアによると、新たに1500人のキャランバが、ホンジュラスを出発したという。
実は筆者は、ホンジュラスを何度か取材したことがある。最初は1992年だった。取材というよりも、旅行者になりすまして、この国の実態を探ったというほうが適切かも知れない。その後、95年にも現地へ足を運んだ。その成果は、拙著『バイクに乗ったコロンブス』(現代企画室)に収録した「将軍たちのいる地峡」というルポに集約されている。
しかし、それ以後は現地の実情を自分の眼で確認する作業を怠っているので、現在の政治問題がなぜ発生したのかについて、確定的な意見を言うことができない。ただ、次のような事情ではないかと推測する。
チリの軍事クーデターから45年、政治の力学、海外派兵、政治家の資質
チリの軍事クーデターから45年が過ぎた。チリの「9.11」は、ラテンアメリカの人々にとっては、記憶の中の色あせた遠い事件になっていくどころか、ますます鮮明さを増し、多様な観点から再考される事件である。常に現在へ蘇ってくるのだ。
実際、キューバのプレンサ・ラティーナ紙やメキシコのラ・ホルナダ紙などラテンアメリカの主要な新聞(電子)は、今年も「9.11」についての記事を掲載している。スペインのエル・パイス紙も、この事件を取り上げている。
チリの軍事クーデターからは、政治力学の問題と、内政干渉(海外派兵)の問題が鮮明に見えてくる。
米国の独立テレビ局「Democracy Now!」 が伝えた歴史的判決の瞬間、日本の検察官と裁判官に必見
三権分立の崩壊が加速して、司法の場に「政治判断」が幅をきかすようになってしまった日本。その一方で、世界に視線を向けると、急速に民主主義を成熟させているかつての発展途上国がある。
中米グアテマラ--。1960年代の初頭から96年まで、軍事政権に対峙するゲリラ活動があった国で、とりわけ70年代の後半から80年代にかけては、グアテマラ民族革命連合(URNG)と政府軍の対決のもとで、暴力の嵐が吹き抜けた。
81年と82年の2年間だけでも、グアテマラの最高学府・サンカルロス大学の教授97人が殺害されている。宗教関係者の殺害は207件。殺されたジャーナリストは47人である。政府軍と警察による犯罪である。
ニカラグア革命39周年、海外派兵体制の構築の裏に何が隠されているのか
早いもので7月19日で、ニカラグア革命から39年だ。現地では、毎年のように記念式典が行われてきた。2日前には、「歓喜の日」を祝った。これは当時の独裁者・ソモサが自家用ジェットで、マイアミへ亡命した日である。
その2日後に、FSLN(サンディニスタ民族解放戦線)が、首都を制圧して、新生ニカラグアが誕生したのである。
最近のニカラグア情勢といえば、学生グループとFSLN政権の間で衝突が起きていて、多数の死傷者が出ている件が国際ニュースになっている。西側メディアは、政府による弾圧と報じている一方、ベネズエラのTelsurなどは、トランプ政権から右翼の学生たちに活動資金が流れていると報じている。
いずれにしても政府が対話を呼びかけ、平和的に解決しようとしていることは事実のようだ。
海外ニュースの真相は、やはり現地へ行かなければ分からない。想像と事実の間には、かならずギャップがある。そんなわけでこの事件に、ここで言及することは控えたい。
映像ジャーナリズムの最高傑作、ミゲル・リティン監督『チリ潜入記』
『戒厳令下チリ潜入記』(岩波新書)という本をご存じだろうか。チリの映画監督で、1973年の軍事クーデターで海外へ亡命したミゲル・リティンが、1985年に、祖国に潜入して軍事政権下の実態を動画で記録したときの体験を、コロンビアのノーベル賞作家・ガルシア=マルケスが、聞き書きしたものである。当然、筆者はこの本は実話(ルポルタージュ)だと思っていた。
ところがミゲル・リティン監督が制作した動画のドキュメンタリーと、『戒厳令下チリ潜入記』の内容が異なっていることが最近分かった。この本は、半分創作である。その是非はともかくとして、実話の意味を再考する必要があるようだ。
両者の違いが典型的に現れているのは冒頭である。動画では、変装したリティン監督が、早朝にチリの空港に到着する。動画をみれば、それが早朝であることがすぐに分かる。
ところがガルシア=マルケスの本では、リティン監督が深夜に空港に到着する設定だ。そして予想に反して、ネオンが輝く繁栄したチリの姿に戸惑う様が描かれる。どうやらガルシア=マルケスは、新自由主義の光と影を対比させるために、リッテン監督が深夜に到着して闇の中にネオンの輝きを見る設定にしたようだ。この本は、創作である。
次に紹介するのは、2016年9月12日のバックナンバーである。
メキシコで初の左派政権が誕生、政治亡命者に寛容な国民性
7月1日に投票が行われたメキシコ大統領選で、初めての左派大統領が誕生した。 アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(国民再生運動)が、圧勝して、2018年12月から左派政権が誕生することになった。
ラテンアメリカでは、今世紀に入るころから、次々と左派政権が誕生してきたが、このところ右派が再度勢力を挽回する兆しが見えていた。メキシコは北の大国・アメリカ合衆国と国境を接しており、左派政権の誕生は、反米色が濃いラテンアメリカ全体に大きな影響を及ぼしそうだ。
ただ、筆者はアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール氏の経歴をほとんど知らない。したがって現時点での評価は避けるが、メキシコの国柄については、詳しい。
中国・北朝鮮・ボリビアが北京で秘密会談か? 金正恩委員長とボリビアのモラレス大統領がまったく同じ時期に中国を訪問
ある2つの新聞記事を検討してみると、「社会主義圏」の興味深い動きが見えてくる。2つの記事とは、時事通信とキューバのプレンサ・ラティナ紙(Prensa Latina)の記事である。
時事通信は、20日付けで「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong Un)朝鮮労働党委員長が20日、3度目の中国訪問を終えた」と報じている。このニュースは日本でも大きく報じられた。■出典
一方、プレンサ・ラティナ紙は、19日付け(日本時間では20日)で、「ボリビア大統領であるエボ・モラレスが本日、中国訪問を終えた」と報じている。■出典
つまり金委員長とモラレス大統領がまったく同じ時期に中国の習近平主席と接触しているのである。報道はされていないが、秘密裏に3者の会談が行われた可能性が極めて高い。