1. 裁判官の人事異動で広がる司法制度に対する不信感 田中哲郎裁判官のケース

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2013年07月04日 (木曜日)

裁判官の人事異動で広がる司法制度に対する不信感 田中哲郎裁判官のケース

司法の劣化が顕著になっている。なんらかのかたちで裁判に係った体験がある読者の中には、司法制度に対する不信感を募らせている人が多いのではないだろうか。小泉元首相が委員長に就任してスタートした司法制度改革の結果、三権分立は崩壊した。あるいは元々、三権分立は幻想だった。

日本の裁判のずさんな実態が次々と浮上している。裁判官の人事をコントロールしている者が、影で判決をあやつっている可能性もある。

ここ数年の間、わたしは新聞販売問題に関する裁判と、携帯基地局に関する裁判を取材してきた。その中で、具体的に「不自然」と感じたことを記してみよう。

◆田中哲郎裁判官のケース

携帯基地局からは、マイクロ派と呼ばれる電磁波が放出されている。これは放射線の仲間で、最近になって遺伝子毒性が指摘されるようになってきた。マイクロ波が遺伝子を破壊して、癌などのリスクを高めるというのだ。実際、海外で行われた疫学調査では、携帯基地局の周辺に住む住民の癌発症率が、その他の地域よりも高いという結果が出ている。(ドイツ、イスラエル、ブラジルなど)

携帯基地局の撤去を求める住民訴訟はたびたび起こされてきた。

2004年6月25日に熊本地裁で、2つの訴訟の判決が下された。沼山津裁判と御領裁判である。いずれの裁判でも、田中哲郎判事が裁判長を務めた。

判決は住民の敗訴だった。 ?田中哲郎裁判官は、三潴裁判にもかかわっている。

◆三潴裁判

 三潴裁判は、久留米市の三潴地区の住民が、2002年に基地局の操業停止を求めて起こした裁判である。この裁判で不可解なのは、結審の日に裁判長が交代したことである。

 三潴裁判に先行する2件の裁判で住民を敗訴させた田中哲郎裁判官が、「わざわざ結審の日に福岡地裁久留米支部へ赴任」(『隠れた携帯基地局公害』緑風出版)し、三潴裁判の裁判長になったのだ。つまり敗訴の判決を書くために人事異動させられたとしか解釈できない。

田中判事に対する不信感は、その後、次に紹介する延岡裁判とのかかわりの中で深まっていく。裁判官の人事そのものが不自然なのだ。

◆人事異動による判決のコントロール? 

この裁判は、携帯基地局からの電磁波で、実際に発生した健康被害を根拠に、基地局の撤去を求めたものである。それ以前は、健康被害を受ける可能性を根拠とした裁判だったが、延岡のケースは、携帯電磁波による実被害を根拠にしたはじめての裁判だった。それだけに全国の注目を集めた。

裁判官も判断に迷ったのか、結審から、判決まで8カ月を要した。が、判決の結果は、住民敗訴だった。

しかし、裁判所は基地局周辺で健康被害が発生している事実は認定した。当然、控訴審では住民が逆転勝訴するのではないかとの見方が広がった。   ? ところが第2回の口頭弁論から、4月に着任したばかりの田中哲郎判事が裁判長に主任したのだ。現在、裁判は進行中である。住民敗訴の可能性が高い。

わたしは裁判官人事による判決のコントロールを疑う。

◇平山・黒薮の裁判でも裁判官の人事異動

2008年3月1日、読売はYC久留米文化センター前店を強制的に改廃した。これに対して店主の平山春男さんは、福岡地裁・久留米支部へ地位保全の仮処分命令を申し立てた。

判決は、平山さんの勝訴だった。これに対して読売は異議を申立て、異議審になった。この段階で登場したのが、田中哲郎判事だった。田中判事は、平山氏を敗訴させ、読売を逆転勝訴させた。

一方、地位保全の本裁判は、福岡地裁(福岡地裁)で進行していた。当時、わたしも福岡地裁で、読売に対する損害賠償裁判を起こしていた。つまり読売相手の平山裁判と黒薮裁判が同時進行していたのだ。

この福岡地裁へ久留米支部から赴任してきたのが、田中哲郎判事だった。そして平山裁判と黒薮裁判の裁判長に就任したのである。平山さんにしてみれば、仮処分裁判の異議審で自分を敗訴させた判事が、新たに裁判長に就任したわけだから納得出来なかったに違いない。

判決は、いずれの裁判も平山、黒薮の敗訴だった。

これら一連の裁判よりも、もっと不自然なのは、真村裁判と木村元昭裁判官の関係である(続く)