2013年06月28日 (金曜日)

最高裁に対する情報公開 回答期限を60日延長 構造改革の中で劣化する司法

最高裁に対して「朝日、読売、日経が上告人か被上告人になった裁判の判決結果を示す文書を2000年度に遡って公開するように請求」した件について、6月26日付けの文書が最高裁から届いた。次のような内容だった。

「文書の探索及び精査に時間を要しているため、30日以内に回答することができません。なお、回答予定時期につきましては、本日から2か月程度かかる見込みですので御了解願います」

(通知の全文=ここをクリック)

◇「2230万円支払え裁判」

わたしが上記の情報公開を請求している理由は、朝日、読売、日経は裁判ではめったに敗訴しないという話を耳にしたからだ。それが事実であるかを調査するために、情報公開に踏み切ったのである。

わたし自身も、明らかにおかしいと感じた裁判がある。たとえば2008年に読売が、わたしの記事に対して、名誉毀損で2230万円のお金を支払うように求めた裁判。この裁判は地裁と高裁は、わたしの勝訴だった。刑事裁判ではともかくも、民事裁判では地裁と高裁で勝訴した場合、最高裁で判決が覆ることはめったにない。

しかし、「2230万円支払え裁判」では、最高裁が読売を逆転勝訴させることを小法廷の判事全員が合意して、判決を高裁を差し戻したのである。そして読売新聞に複数回登場したことがある加藤新太郎裁判官が110万円の支払いを命じたのである。わたしはこの件について、多くの法曹関係者に問い合わせをしているが、「明らかに不自然」という声が大半を占めている。

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2013年06月27日 (木曜日)

財務省の公共広告 1件4億円 版下製作は2件で2300万円 支払先は黒塗り

最高裁と内閣府に続き、その他の省庁に対しても、新聞の公共広告に関係する出費の明細を公開するように情報公開を請求した。入手した資料を検証した結果、省庁によって発注価格にばらつきがあり、不自然な金額の出費があることが分かった。

今回は財務省のケースを紹介しよう。2008年6月に45紙に掲載された「平成20年国債広告の制作・実施」を公共PRする広告のケースである。

総額:4億1370万円 (印刷製本費2361万円、雑役義務費3億9000万円)

掲載回数:1回

広告サイズ:5段の半分、ただし朝日、読売、日経は、5段。

掲載紙:45紙

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2013年06月26日 (水曜日)

公共事業は諸悪の根源? 長良川河口堰に見る官僚の際限ないウソ 【再掲載】

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

アベノミックスで第3の矢、「成長戦略」が出た途端、株価は大暴落しました。参院選で従来の自民の票田である既得権層に媚びを売り、肝心の規制緩和にはほとんど手付かず。具体策を欠く一方で、道路など大規模補修を隠れ蓑に「国土強靭化計画」と称して公共工事の大復活です。八ツ場ダムも建設に向けて大きく舵を切りました。これでは借金漬けで、この国はやがて沈没するのではないかと、市場が心配しても無理からぬところです。

前回のこの欄で、官僚・政治家がいかに国民・住民を欺き、利権目当てに無駄な公共事業を押し進めるものか、私が解明を始めた長良川河口堰について、取材の経過を具体的に書いてきました。今回はその続き、二回目です。

建設省が国交省と名前は変わっても、やっていることは、長良川河口堰も、八ツ場ダムも大きな違いがないと、私は思っています。だから、長良川河口堰で、何が行われてきたか。官僚たちにこれ以上無駄な税金を使わせないためにも、朝日が記事を止めたことで、国民・住民に知らせることが出来なかった、その「真実・内情」をぜひ、多くの皆さんに知って戴きたいのです。

◇口実となった安八水害につてのウソ

前回のおさらいをまず、しておきましょう。 長良川河口堰計画が持ち上がったのは、1950年代の高度成長期。河口の南、四日市市に工業コンビナートが造られ、鉄鋼、化学などの重厚長大産業は、大量の工業用水を必要としていたからです。

しかし、1980年年代後半、バブルで経済は隆盛でも重厚長大産業時代は去り、水需要は全く伸びていませんでした。建設省が、河口堰の建設理由・名目を「利水」から、「治水」に大きく転換させたのはこの時です。

格好の理由付けになったのは、1976年9月に起きた長良川安八・墨俣水害でした。何としても着工に漕ぎ着けたい建設省にとっては、「水害から住民の命を守るためには、堰は不可欠」と主張することは、水余りの中で、「税金の無駄遣い」との建設反対運動の高まりに対抗する最も好都合な理由だったという訳です。

安八水害は、台風の影響でシャワーのような大雨が4日間も降り続いたことで起きています。しかし、この時の決壊場所付近の実測最大流量は毎秒6400トン。でも、よく取材してみると、その時の水位は4日間の最高でも、堤防下2メートルに建設省が定めた安全ライン(計画高水位)より、さらに1メートル以上も下。堤防上から見れば、3メートル下にしか水は来ていなかったのです。

このデータから言えることは、毎秒6400トン流れる大水程度では、長良川堤防には十分な余裕はありました。「安八水害は堤防高や川幅、川底の深さが足りない流下能力(河道容量)の不足によって起きた洪水ではなかった」とまでは明確に言えます。それでも大量の濁水が家屋や田畑を飲み込んで、大水害になったのは、堤防に弱い個所があり、その場所に穴が開き、もろくも崩れたのが原因です。

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2013年06月25日 (火曜日)

最高裁に新たに情報公開請求 YC広川の元店主・真村氏解任の根拠とされた「情報」「資料」とは何か?

6月24日付けで、最高裁判所に対して新たに2件の情報公開請求を申し立てた。いずれも6月18日に最高裁が上告棄却を決定した第2次真村裁判に関するものである。

【1】 上告人・真村久三と読売新聞西部の裁判(平成24年(オ)1604号・平成24年(受)1987号)で、2013年6月18日に、上告を棄却するに至る手続き、議論などのプロセスの内容を示す全文書を公開せよ。

【2】 上告人・真村久三と読売新聞西部の裁判(平成24年(オ)1604号・平成24年(受)1987号)で、貴裁判所が2013年6月18日に、上告を棄却することで認定した福岡高裁判例(平成23年[ネ]第390号)について。 同判決の中に、上告人真村と彼の代理人弁護士らが「黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白」(33項)という記載がある。ここで言及している「情報」「資料」に該当する証拠をすべて公開せよ。

第2次真村裁判は、YC広川の元店主・真村久三さんが店主としての地位保全を求めて起こした裁判である。しかし、18日に最高裁が上告を棄却したことで、真村氏の敗訴が決定した。

最高裁が認定したのは、福岡高裁の木村元昭裁判官が執筆した判決である。その中で木村裁判官は、真村さんと彼の弁護団がわたしの取材に応じて、「情報」や「資料」を提供したことが真村さんの解任理由として妥当との判断を示した。

しかし、木村裁判官は判決の中で「情報」「資料」の中味を明記していない。そこで読売が証拠として裁判所へ提出したはずの「情報」「資料」のうち、木村裁判官が解任理由の根拠としたものの開示を求めたのである。

やぶからぼうに「黒薮の取材に応じ、情報や資料の提供を行ったことは明白であり、控訴人(真村)は、少なくとも、黒薮の上記記事等の掲載を幇助した」 (福岡高裁判決)と、言われても、具体的にどの「情報」「資料」を指しているのか分からない。

わたしが記憶している限りでは、裁判所の閲覧室で一般公開されている資料だったはずだが・・・。

最高裁の岡部喜代子、大谷剛彦、寺田逸郎、大橋正春の4判事は、木村裁判官が執筆した福岡高裁判決を検証した上で、上告を棄却したわけだから、当然、「情報」「資料」の中味を知っているはずだ。

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2013年06月24日 (月曜日)

SLAPP(口封じ・恫喝)裁判を闘う 社会正義を実現する場であるはずの裁判所で何が起こっているのかを報告

日本ジャーナリスト会議(JCJ)の出版部会は、6月25日に「SLAPP(恫喝)訴訟を闘う」と題する報告会を開く。報告者は、わたしと田中稔さん。田中稔さんは、週刊金曜日の記事をめぐり白川司郎氏から6700万円のお金を支払うように請求されている。(週刊金曜日は訴外)

タイトル:SLAPP(恫喝)訴訟を闘う

日時:6月25日 18:30分? ?????? (黒薮、田中の順で報告)

場所:岩波セミナールーム(岩波ブックセンターの3階

(報告会についての詳細=ここをクリック)

 

諜報活動はお断り。過去の「押し紙」関係の集会で、諜報活動が発覚しています。

 

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2013年06月22日 (土曜日)

真村訴訟で生まれた恐怖の判例 取材に応じる人がいなくなる可能性も 

21日付け「黒書」で報じたように、第2次真村訴訟が読売の完全勝訴で終わった。裁判は、最高裁が真村氏の上告を棄却するかたちで終結した。

真村訴訟は、2001年に始まった。当時、YC広川(福岡県)の店主だった真村久三さんに対して、読売が配達地区の一部を読売に返上するように求めたのが発端だった。もともと真村さんの持ち部数は約1500部と少なかったが、読売の提案を受け入れると、約500部も減ってしまう。200万円の減収になり、販売店経営が圧迫される。

後日判明したことであるが、返上した地区は、幅広く新聞ビジネスを展開する?有力店主?の弟が経営する隣接地区のYCへ譲渡する予定になっていた。

真村さんは、読売の提案を断った。それを機に読売と係争関係になり、訴訟へと発展したのである。第1次真村訴訟の間、YC広川は飼い殺しの状態にされた。それでも真村さんには経営の才覚があったので、なんとか経営を維持した。

第1次裁判は、真村さんの完全勝訴だった。地裁から最高裁まで真村氏が勝訴した。しかも、福岡高裁では、画期的な判例が生まれた。裁判所が読売による優越的地域の濫用を認定したのである。たとえば、「押し紙」については、

新聞販売店が虚偽報告をする背景には、ひたすら増紙を求め、減紙を極端に嫌う一審被告の方針があり、それは一審被告の体質にさえなっているといっても過言ではない程である。

(福岡高裁判決の全文=ここをクリック)

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2013年06月21日 (金曜日)

最高裁が恐怖の判例を認定 真村訴訟で真村氏敗訴 読売の勝訴が確定

読売(電子版)に「西部販売店訴訟で読売新聞側の勝訴確定」と題する記事 が掲載されている。これは第2次真村裁判で、最高裁が真村さんの上告を棄却して、読売の勝訴が確定したことを伝える内容である。

同記事は、訴因と裁判所の判断を次のように報じている。

西部本社は2008年7月、新聞社が販売店に余分な部数の新聞を押しつける「押し紙」があるとの記事を週刊誌などに執筆していた黒薮哲哉氏(55)と連携して極端な本社攻撃活動を行ったなどとして、真村氏との契約更新を拒絶した。

真村氏は訴訟で「更新拒絶に正当な理由はない」と主張したが、1審・福岡地裁、2審・福岡高裁は「様々な点で真村氏の背信行為が認められる」「押し紙の事実は認められず、真村氏が黒薮氏に情報や資料を提供したことは、西部本社の名誉や信用を害した」などとし、本社側の契約更新拒絶の正当性を認めた。

「押し紙」が存在するか否かは、「押し紙」をどのように定義するかで変わってくる。従って引用文が意味しているのは、裁判所が認定した定義の「押し紙」は存在しないということである。しかし、「積み紙」、あるいは偽装部数(残紙)が存在するか否かはまた別問題である。今後も検証を要する。

(PDF「押し紙」(偽装部数)とは何か?=ここをクリック)

また、真村さんの敗訴理由として、「押し紙の事実は認められず、真村氏が黒薮氏に情報や資料を提供したことは、西部本社の名誉や信用を害した」と述べているが、取材を受けて、情報を提供したことが改廃理由として認められるとなれば大変な問題だ。今後、誰も取材に応じなくなり、出版産業の存在も危うくなりかねない。

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