1. 滋賀医科大医学部付属病院の事件で原告が控訴を断念、弁護団が声明を発表

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2020年05月02日 (土曜日)

滋賀医科大医学部付属病院の事件で原告が控訴を断念、弁護団が声明を発表

滋賀医科大医学部付属病院の事件で、原告が控訴を断念した。4月28日、弁護団長の井戸謙一弁護士は、「控訴断念についての声明」を発表した。

それによると判決そのものは不当としながらも、原告が高齢であることなどを考慮して、控訴を断念するに至った。しかし、原告が主張してきた事実関係はほぼ認定されたことや、最終的には、50人もの前立腺がん患者の命を救ったことも大きな成果として評価している。

以下、声明文である。  (PDFはここから)
2020年4月28日

控訴断念についての声明

滋賀医大小線源治療説明義務違反事件弁護団
弁護団長   井  戸  謙  一

1 本日、滋賀医大小線源治療説明義務違反事件の原告の皆さんは、大津地裁が本年4月14日に言い渡した判決(以下「本件判決」)に対する控訴を断念することを決定されました。

1 本件判決は、具体的な事実関係については原告らの主張を概ね認めながら、結論としては原告らの請求を棄却する不当なものでした。

具体的に指摘すれば、本件判決は、被告らが主張した「治療ユニット」の実態がなかったことを認め、被告K教授が岡本医師作成名義文書を偽造したことを「岡本医師の意思に基づいて作成されたものではない」という表現で認め、被告N准教授がカルテに「自分が未経験であることを説明した旨」虚偽の記載をしたことも認めました。

そして、N准教授の供述態度を、仮定的な言い回しながら、訴訟戦略に影響されていて真摯に事実を述べる姿勢に欠けるものと非難しました。また、小線源治療における泌尿器科医師の役割を矮小化したK放射線科医師の証言内容を認めませんでした。

その上で本件判決は、原告ら4名のうち、2名の関係で被告らの説明義務違反を認めながら、損害を否定して請求を棄却し、残りの2名については説明義務違反を認めず、請求を棄却しました。

この結論になったのは、①医師の患者に対する説明義務の範囲を狭く解釈し、②被告らの説明義務違反が意図的ではなかったと誤って判断し、③自分が初心者医師のモルモットにされる一歩手前だったことを知った患者の怒りや恐怖を正当に評価しなかったことが原因です。

3 私たちは、裁判所のこれらの判断は不当なものであり、上級審で是正されるべきものであると考えます。

 しかし、提訴からの1年8か月、全力でこの裁判に取組んでこられた原告の方々、及び原告の方々を支え、励まし、支援してこられた患者会の皆さま方は、いずれも高齢であって、疲労が激しく、また控訴した場合の勝訴の展望も明確ではないこと、本件判決は、結論においては敗訴であるものの、判決理由中には、原告側の主張を認め、被告らを断罪した部分が随所にあること、また関連する仮処分事件の勝訴によって50人もの前立腺がん患者の方々を岡本メソッドで救うという成果を挙げることができたこと等から、原告の皆さんは、本件判決に対し、控訴を断念するという決断に至ったものです。

4 この裁判で明らかになったのは、「患者の最善の利益のために行動すべきこと」を定めたヘルシンキ宣言に背馳する日本の医療界の古い体質であり、良心的な医師及び患者の方々がその犠牲になることでした。

 幸い、この事件は大きく報道され、多くの人々の知るところとなりました。医療関係者のみならず、広く社会一般においてこの事件を教訓としていただき、日本の医療界の改善のための力にしていただくことを期待いたします。

以上

 

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