1. 滋賀医科大病院の小線源治療をめぐる事件、病院が待機患者らに「踏み絵」、来年からは、岡本医師の治療と経過観察を受けないことを求める承諾書の存在が判明

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2019年06月11日 (火曜日)

滋賀医科大病院の小線源治療をめぐる事件、病院が待機患者らに「踏み絵」、来年からは、岡本医師の治療と経過観察を受けないことを求める承諾書の存在が判明

滋賀医科大付属病院の小線源治療をめぐる事件で、次々と新事実が明らかになっている。この事件は、前立腺癌に対する最先端の小線源治療(5年後の非再発率は、転移の高いリスクのある患者でも、95%を超えている)を行ってきた岡本圭生医師が特任教授を務める小線源治療学寄付講座とそれに併設する「岡本外来」を2019年12月31日で閉鎖する病院の方針に対して、岡本医師と患者らが治療の継続を求めているものである。(手術については、6月30日で終了の方針)

詳しい事件の経緯については、この記事の最後にリンクした記事を参考にしてほしい。

◆岡本医師の勝訴に病院は異議申立

さて、この事件の最新の情報を提供しよう。

岡本医師による小線源治療(以下、岡本メソッド)の継続を求める待機患者と岡本医師は、今年の2月に大津地裁に対して仮処分を申し立てた。病院が6月30日をもって岡本医師による手術の「執刀」を終了する方針を告知したのに対して、7月1日以降も手術を実施するように求めた内容である。

これに対して大津地裁は、5月20日に治療(手術)を11月26日まで続けるように命じる決定を下した。これにより少なくとも23名の待機患者が岡本医師の手術を受けられることになった。大津地裁は、癌患者の人命を最優先したのである。

ところが病院は、仮処分を不服として抗告異議申立を行った。抗告異議申立とは、簡単に言えば再審査を求めることである。抗告異議が申し立てられたことで、大津地裁は再度この事件を審査する。

しかし、再審査の結果が出るまでは、仮処分命令が効力をもつので、病院は命令に従わなくてはならない。ところが病院は、治療の継続にさまざまな条件を設けてきたのだ。

◆岡本メソッドの手術枠を縮小

岡本医師による手術は、原則として毎週火曜日に3人の患者に対して行われる。1週間で3人、ひと月で約12人のペースである。これまでの手術件数は、すでに1100件を超えている。

大津地裁は、仮処分の中で、「令和元年7月1日から同年11月26日までの間、岡本医師による前立腺癌小線源治療の施術を妨害してはならない」と命じている。と、なれば病院は、従来どおりのプロセスと手術枠を提供しなければならない。ところが、まず手術枠を減らしてきたのだ。(写真提供=田所敏夫)

8月、9月、10月、11月の第一火曜日を岡本医師の手術枠からはずした。

他にも患者に関連する書類の作成方法について、従来とは異なる指示をだすなど、岡本医師に新たな負担を課してきたのである。

こうした処置に対して、岡本医師の弁護団は、5月30日に、病院側の代理人弁護士に警告書を送付した。

◆患者に対する「踏み絵」

さらに待機患者に対しても、手術を受けるに際して、新たに承諾書なるものの提出を求めている。「前立線癌小線源治療実施についての承諾書」と題する文書で、3項目の承諾を求めている。3項目とも、理不尽な内容となっているが、特に問題なのは、患者に対して、来年の1月1日以降は、泌尿器科の医師による治療と経過観察を受けるか、他の医療機関へ転院することの承諾を求めた項目である。

1月1日以降は、岡本医師の治療や経過観察を受けないことを約束させているに等しい。岡本医師は、今年の12月31日に解雇されることになっているが、患者らは、岡本メソッド継続の運動を展開している。この運動をつぶすために、来年の1月1日以降の治療と経過観察について、承諾を求めた可能性が高い。

待機患者らは戸惑ったに違いない。と、いうのも承諾書に捺印しなければ、手術が受けられないという恐怖感があるからだ。かといって捺印すれば、手術を「執刀」する岡本医師に対して後ろめたいうえに、自分達が展開してきた岡本
メソッド継続の運動と矛盾することになる。

この承諾書は、岡本医師と待機患者に対する嫌がらせに等しい。

◆岡本医師を追放する理不尽な理由

病院が岡本医師を12月31日で解雇する根拠は、小線源治療学寄付講座の契約である。岡本医師は、もともと同病院・泌尿器科の講師だった。ところが2015年1月にスタートした小線源治療学寄付講座の特任教授に就任したことで、それまでの正職員の身分がなくなった。しかし、寄付講座を設置した場合、講座が満期終了する前に、更新するのがこれまでの慣行になっていたうえに、岡本メソッドに特化したセンターを設ける構想もあったので、特任教授になっても、実質的には身分が保障されていた。ところが病院は、係争が勃発した後、寄付講座の更新を最高でも5年に限定する規則を設けて、岡本医師の追放を目論んできたのである。

その背景には、岡本医師が泌尿器科の医師らがおこした医療上の不祥事(実質的には、患者をモルモットした手術訓練計画と、その前段に行われた不適切な医療措置)を問題視して、患者らに説明と謝罪を行うように、塩田浩平学長らへ強く進言したことである。

 

【岡本メソッドとは】
 岡本メソッドは岡本圭生医師によって開発された前立腺癌の治療で、一般の小線源治療よりも、より高い線量で癌細胞を完全に死滅させる方法だ。が、それにもかかわらず、前立腺周辺の臓器は放射線被曝を回避できる高度な技術である。

 岡本メソッドの成績は、5年後の非再発率が、低リスクの前立腺癌で98.3%、中リスクで96.9%、高リスクでも96.3%である。これに対して一般的な小線源治療、全摘出手術、それに外部照射治療では、非再発率は40%から70%にとどまる。岡本メソッドは、癌が転移さえしていなければ、高リスクの癌でも、浸潤した癌でもほぼ100%完治させることができる。その治療技術は海外でも高い評価を受けている。

  保険の適用もされ、手術件数は1100件を超えている。

 ちなみに高リスクの患者に対しては、小線源治療に加えて、ホルモンを投与するホルモン療法と放射線外照射療法を組み合わせる。これはトリモダリティ療法と呼ばれ、岡本メソッドの優位性のひとつである。

◆参考記事

【AERA】無理な要求で自殺も考えた…“名医”が滋賀医大病院を追われる理由

 

【ビジネスジャーナル】滋賀医科大病院、特定のがん治療突如中止で大量の待機患者発生…不適切処置で治療困難な患者も

【デジタル鹿砦社通信】岡本医師の治療継続を求める滋賀医大小線源治療患者会第2回デモに150名参加!

 

【マイニュースジャパン】

 最初の司法判断は岡本圭生医師の完全勝訴――滋賀医科大の小線源治療をめぐる事件で法的措置が多発

 滋賀医科大学医学部付属病院で発覚した患者モルモット未遂事件――患者を守るために体を張ったスーパードクターに対する組織的報復