1. クールビスを口実としたデタラメな国家予算の支出、過去には3年間で博報堂へ90億円

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2018年08月16日 (木曜日)

クールビスを口実としたデタラメな国家予算の支出、過去には3年間で博報堂へ90億円

「ファンド」とは、「複数の投資家から集めた資金を用いて投資を行いそのリターンを分配する仕組み」(ウィキペディア)のことである。「官民ファンド」は、国策に基づき政府と民間で出資して設けるファンドである。

経済産業省に、(株)海外需要開拓支援機構というファンドがある。俗に「クール・ジャパン機構」と呼ばれている。同社のウエブサイトによると、事業内容は次のようになっている。

クール・ジャパン機構は、日本の魅力ある商品・サービスの海外需要開拓に関連する支援・促進を目指し、2013年11月、法律に基づき官民ファンドとして設立されました。

「日本の魅力(クールジャパン)」を事業化し、海外需要の獲得につなげるため、「メディア・コンテンツ」、「食・サービス」、「ファッション・ライフスタイル」をはじめとする様々な分野でリスクマネーの供給を行っています。

あいまいな定義だが、クールビズの概念には、地球温暖化防止に関するプロジェクト(環境省)なども含まれており、その範囲はかなり広い。「官民ファンドがクールビズを展開している」と言われても、大半の人には、具体的に何をやっているのかよく分からないだろう。分からないからこそ、要注意なのだ。

2017年4月の時点における海外需要開拓支援機構に対する出資内訳は次の通りである。

政府:586億円
民間:107億円

しかし、44億円の損失を出していることが、ビジネスジャーナルの報道で分かった。同ウエブサイトは、次のように報じている。

クールジャパン機構は安倍政権の成長戦略の目玉だった。外国人が“クール”ととらえる日本の魅力を情報発信して、海外で商品を販売したりサービスを展開。観光によるインバウンドの増加を図る狙いで13年11月に設立された。17年4月時点の出資金は693億円。政府出資が586億円、民間出資が107億円だ。会計検査院は17件、310億円を投融資して44億円の損失が生じていると指摘した。「非効率な運営」「事実上成果ゼロ」との批判の声が上がる。■出典

◇電通、博報堂、アサツー ディ・ケイ

ちなみに海外需要開拓支援機構を構成している企業は次の通りである。赤で表示したのは、広告代理店である。

アサツー ディ・ケイ
ANAホールディングス
エイチ・ツー・オー リテイリング
大垣共立銀行
京葉銀行
ジェイティービー
J.フロント リテイリング
商工組合中央金庫
大日本印刷
太陽生命保険
大和証券グループ本社
髙島屋
電通
凸版印刷
博報堂DYグループ
パソナグループ
バンダイナムコホールディングス
フジ・メディア・ホールディングス
みずほ銀行
三井住友銀行
三井住友信託銀行
三越伊勢丹ホールディングス
LIXILグループ
日本政府(経済産業省)

◇3年間で90億円が博報堂へ

意外に知られていないが、クールビスを口実とした国家予算の支出は、10年以上も前から、その額の大きさゆえに問題になってきた。

たとえば、2007年6月8日に、民主党の末松義規議員が、環境省から博報堂へ3年間で約90億円もの国家予算が、環境関連プロジェクトを口実に支出されていた事実を国会で追及している。第1次安倍内閣の時代である。

質疑を引用しておこう。

末松 博報堂とは年間どのくらいの費用というか契約をやっているんですか。27億円という話を聞きますが、それは事実ですか。

南川参考人  今年度につきましては、年間トータルで27億円の契約をいたしております。

末松 広告については1億6500万円という話が出ていますが、それも事実ですね。

南川参考人 確定作業はこれからでございますが、ほぼ昨年と同じで1億6500万円だというふうに考えております。

末松 最後の質問なんですけれども、博報堂とは、では、ことしと去年とおととし、これはずっと30億円近くのお金で契約をしてきたんですね。(略)

南川参考人 企画競争をして、外部の審査も行った上で、そういった契約をしております。

◇契約額に1億円をプラスの不可解

「平成27年度低炭素社会づくり推進事業委託業務」では、これも博報堂に対して、8億6285万円が支出されている。しかも、この額は当初の契約額に1億円が上乗せされた額である。下記の契約書に示された変更事項がそれを示している。

筆者は、中央省庁と広告代理店の不可解な取り引きの実態を2016年に大がかりに取材した。その結果、クールビスを口実に巨額の国家予算が支出されていることを知った。

この問題に関する記事は、メディア黒書のカテゴリー「大手広告代理店」に数多く収録されている。しかし、今後、2度目の検証を進めていく方針だ。古い記事も合わせて紹介していきたい。

中央省庁の一部は伏魔殿になっているといっても過言ではない。しかも、それに大手広告代理店が絡んでいるのだ。

 

【参考記事】内閣府向けの手作りの請求書が4年間で約64億円分の異常、電通とは別の顔、児玉誉士夫と博報堂の闇を検証する

 

写真:統一協会系の雑誌の表紙に登場した安倍首相