1. 日本年金機構のデータ入力事件、過去に博報堂が起こした郵政事件の構図と類似

大手広告代理店に関連する記事

2018年03月30日 (金曜日)

日本年金機構のデータ入力事件、過去に博報堂が起こした郵政事件の構図と類似

日本年金機構がデータ入力を外部の会社に委託して、大量の入力ミスを発生させた事件が発覚した。データ入力を請け負っていたのは、SAY企画という会社である。大量の入力ミスを発生させた原因は、SAY企画が入力業務を中国の会社に再委託していたからである。ある経営コンサルタントは、次のように話す。

「日本で入力すれば1件、最低でも80円ぐらいのコストがかかりますが、中国で入力すれば5円ぐらいです。75円が丸儲けという構図になっています」

このSAY企画に関してはさまざまな情報が飛び交っているが、実体はよく分からない。マスコミがなぜか詳しい報道を避けているからだ

実は、この事件とよくにた手口の事件が過去にも発生していたのを、読者はご存じだろうか。心身障害者用の「低料第3種郵便物の割引制度」を悪用した事件で、2008年10月に朝日新聞のスクープによって明らかになった。

手口は単純で、企業がPR活動などの手段として利用するダイレクトメール(広告の一種)を、心身障害者用の「低料第3種郵便物の割引制度」を使って、低料金で発送して、経費を削減するというものだった。もちろん企業は、心身障害者ではないので、この制度の利用は違法行為である。

驚くべきことに、この事業の営業には広告代理店・博報堂の子会社が関与していた。

なぜ、広告代理店が関与していたのか、ある種、不思議な気もするが、それに先だって、大がかりな裏工作が郵政と博報堂の間で進行していたことが、当時の総務省の文書に残っている。

◇博報堂の接待攻勢

「低料第3種郵便物の割引制度」を利用した事件の発端は、2007年に日本郵政公社が解散して、4つの事業会社が誕生した時点である。4つの事業会社とは、郵便事業株式会社、郵便局株式会社、ゆうちょ銀行、それにかんぽ生命保険である。

さらにこれら4社を統括するために、日本郵政(持ち株会社)が誕生したのである。

本来であれば、5つの会社がそれぞれ広告代理店と契約するものだが、郵政グループは、全業務を博報堂1社に委託したのである。

別の言い方をすれば、個々の会社が独自に広告代理店と契約するのではなく、日本郵政が代表して博報堂と契約したのだ。しかし、博報堂に業務を独占させる決定を郵政が下す過程で、さまざまな裏工作が行われていたことが、当時の総務省の公文書に残っている。

本検証において、C次長と博報堂関係者との間のメールを復元したところによと、技術的に復元できた平成21年1月から同年9月までの間だけでも同次長は同関係者から相当の回数の飲食等の接待を受けており、A専務においても、時に同次長とともに接待を受けていたものと思われる。

現状、A専務・C次長ともに検証チームによるヒアリングに応じず、博報堂においても、当専門委員会からの関係資料の提出要請を拒んでいることから、メールの復元ができた平成21年1月より前の実情は不明であるが、同メールの内容に照らすと、上記の状況は同1月よりも前の時期から始まっていることは間違いのないところと思われる。

出典:検証総括報告書

こうした癒着の結果、たった2年で、博報堂が郵政グループから取り付けた契約額は、2年間で368億円にもなったのである。

  郵政公社時代の06年度の契約額は電通が約51億円、博報堂が約19億円、大広が約2億円などだった。民営化に伴って全体の広告量が増えた07年度は、博報堂との独占契約で約146億円、08年度は約222億円にのぼった。(2009年10月4日)

出典:朝日新聞
郵政事件の背景に、こうした癒着の構図があったのだ。

◇郵政事件と同類の構図

日本年金機構を舞台とした今回の事件も、構図はよくにている。舞台裏で誰がどのような工作をしたのかも含めて検証する必要があるだろう。郵政事件の博報堂のケースに見るように、意外な組織や企業が関与していることもあり得るのだ。

中央省庁が外部に委託している事業についても、同じ構図はないか、再検証が必要だろう。郵政事件は氷山の一角に過ぎなかった可能性もあるのだ。

【参考記事】

博報堂コンサルタンツの取締役に児玉誉士夫の側近・太刀川恒夫氏が就任していた、極右勢力と博報堂の関係、①

1975年ごろから博報堂へ続々と天下り、元国税庁長官2名、内閣府審議官や警察関係者も、病的腐敗の温床か?