1. 内閣府の隠蔽体質、官房の「天下り情報」は開示せず、博報堂から加計学園へ広がる不透明感

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2017年05月18日 (木曜日)

内閣府の隠蔽体質、官房の「天下り情報」は開示せず、博報堂から加計学園へ広がる不透明感

内閣府(総理の直属機関である内閣官房を含む)に対して、同府から「天下り」した職員の名前を過去にさかのぼって開示するように情報公開請求を申し立てている。これに対して内閣府は、内閣官房については開示できないと筆者に通知している。そこで筆者は不開示にする公式な理由を書面で提出するように求めている。

筆者は回答を待っているが、理由書は提出されない。情報公開請求に対して不開示を決定した場合は、その理由を書面で示すルールになっている。内閣府は過去にもそんな対応をしてきた。しかし、今回、内閣官房からの天下り職員の名前を開示しない理由を書いた書面は送られてこない。回答期限の1カ月をすでに過ぎている。

内閣府からの「天下り」は明らかにできても、内閣官房については、実態を公表できないというわけだから、何か特別な理由があるのだろう。

折しもこの時期、加計学園の問題で内閣府が加計学園へ便宜を図っていた疑惑が浮上している。菅官房長官は、17日の記者会見でそれを否定したが、内閣府の灰色ぶりを考えると疑惑があることは間違いない。

◇インボイスナンバーが欠落した請求書

既報してきたように、内閣府は博報堂との広告取引では、商取引の中身を不開示にしてきた。従って予算の用途が分からない。開示されているのは基本的に総額だけだ。たとえば、メディア黒書で繰り返し紹介してきた次の書面である。

■内閣府が開示した黒塗りの資料

この書面にはさまざまな不備があるのだが、たとえばインボイスナンバーが欠落している。企業の場合、ほとんど例外なくコンピューターと連動した会計システムで経理処理をしているので、原則としてインボイスナンバーの付番が必要になる。それをあえて外した合理的な理由が分からない。推測すれば、インボイスナンバーを付番しないことで、正規の会計システムとは別のところで会計処理した疑惑が浮上する。

筆者は博報堂の会計監査とシステム監査がどのように行われたのかを知りたい。これについて博報堂のあすざ監査法人に取材を申し入れたが、拒否されている状態だ。

【参考記事】博報堂によるエクセルやワードによる「手作り」請求書、対象は内閣府と中央省庁だけ、地方の「役所」宛ては正常

このような不透明な方法で2015年度だけで、約25億円を博報堂に支出しているのだ。しかも、同じような経理処理が、安倍内閣が発足する前年から始まっていたのだ。

疑惑を解明するためには、内閣官房から誰がどの企業に天下りしたのかを正確に把握しなければならない。ところがその情報は開示できないと言っているのだ。

◇児玉誉士夫を内閣参与に任命

過去にさかのぼって内閣府の実態を調査してみると、終戦直後から不可解な方針がみうけられる。たとえば東久邇宮内閣は、右翼の児玉誉士夫を内閣参与に任命した。総理大臣の“相談役”的な立場である。

その児玉の秘書・太刀川恒夫が博報堂コンサルタンツの重役になった時期(1975年)から、内閣府から博報堂への天下りが始まっている。警察関係者や国税庁長官も2名が天下っている。

直近で言えば、2016年には、内閣官房の田幸大輔氏(広報室参事官補佐・広報戦略推進官)が博報堂の顧問として天下った。

◇公共の「役所」が情報隠し

公共の「役所」がお金の使途や職員の天下り先を納税者に隠すわけだから尋常ではない。私企業が自社に関する情報を開示しないのは自由である。しかし、公共の「役所」が、情報隠しをするのは誤りではないか。

まして加計学園と内閣府の癒着疑惑が浮上してきた時期である。この件についても、「天下り」の実態などの初歩的な調査が必要だろう。

筆者には、内閣府が何の権限をもって、情報を開示しないのか理由が分からない。内部に汚職などの腐敗があれば、人事も含めて改めるのが公共機関を運営する最低ルールであるはずなのだが。

ちなみに内閣府からのPR予算は、2012年度から15年度の4年間で200億円を超えている。