1. 社印が欠落した放送確認書の存在が明らかに、テレビCM「間引き」の未熟な防止策

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2017年04月05日 (水曜日)

社印が欠落した放送確認書の存在が明らかに、テレビCM「間引き」の未熟な防止策

博報堂事件の原点は、博報堂とアスカコーポレーションの係争を取材したことだった。昨年の秋から、筆者の取材対象は、博報堂と内閣府を含む中央省庁のPR業務に移っているが、依然として、前者についての情報も寄せられている。特にテレビCMの中抜き疑惑に関する情報が多い。

テレビCMが放送されるとコンピューターシステムが作動して、自動的に放送確認書に10桁CMコードが記録される。これがテレビCMを放送したことを立証する唯一の証明書になっている。

1990年代にテレビCMの間引きが多発して問題になった。そこで民放連や広告主協会などの業界団体が共同で対策に乗りだし、2000年からコンピューターシステムによる監視体制を導入したのである。

その後、CMの中抜きは皆無ではないにしろ、ほとんど無くなったといわれている。ところが博報堂とアスカコーポレーションの係争の中で、10桁CMコードが放送確認書に印字されていないものが、1505件も発覚したのである。そのうちの879件は、博報堂が50%の株式を有するスーパーネットワークという衛星放送局のものだった。

◇放送確認書の露骨な偽造

最近、メディア黒書には、放送確認書そのものが偽造されているのではないかという情報が寄せられている。

放送確認書は、コンピューターシステムの下で発行されるわけだから、印字されたときに社印も印刷される。ところが社印がない放送確認書やモノクロの放送確認書が存在するのだ。たとえば次のものである。

■社印のない放送確認書

さらにこの放送確認証は、Windowsの画面が切り張りされており、コンピューターシステムの下で発行されたものではないことが分かる。ワードで作成された可能性が高い。

この放送局(CJ E&M Japan)の放送確認書については、さまざまな疑惑があるので、次の記事を参照にしてほしい。

【参考記事】博報堂事件、チャンネルMnetの放送確認書の不自然さ、解消するべき博報堂の最高検察庁人脈

さらにWindowsの画面を切り張りするなど露骨な偽造はしていないが、放送確認書がモノクロになっているものがある。社印もモノクロである。正常な放送確認書ではあり得ないことである。

これについては今後、取材する。

既に延べたように、放送確認書が導入されたのは、2000年からである。その時点から今日まで17年の歳月が流れ、IT技術は飛躍的に進化した。従って、改ざんの技術も進化していると考えるのが妥当だ。

かりに放送確認書そのものの改ざんが容易に出来るのであれば、放送局や広告代理店は、テレビCMの中抜きで、莫大な利益をあげることができる。

◇内閣府の大量の放送確認書

筆者の手元には、内閣府から入手した多量の放送確認書がある。現段階では、放送確認書をもとに、本当にテレビCMが放送されたかどうかを調べようがない。放送局に問い合わせても、放送の有無を教えてくれないからだ。

透明性を確保するためには、やはり総務省がイニシアティブと取らなければならないが、その動きはない。

また、民放連なども、放送確認書とは別の手段で、CMが放送されたか否かを検証するシステムを構築する予定はないようだ。

これでは民間企業も国も大きな被害を受けかねない。