1. 博報堂、制作していないフェイスブックとツイッターのコンテンツの制作費を内閣府から請求の疑惑

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2017年02月20日 (月曜日)

博報堂、制作していないフェイスブックとツイッターのコンテンツの制作費を内閣府から請求の疑惑

2月17日付けのメディア黒書で、国勢調査の公共広告(新聞による告知)を、広告代理店・博報堂が「間引き」していた問題を報じたが、内閣府が2015年度に博報堂に対して発注したPR事業でも、同種の「間引き」が行われていた疑惑が浮上した。

【参考記事博報堂による6億円事業、H27年度国勢調査の新聞広告の間引き、架空請求の決定的な証拠

2015年4月1日、内閣府と博報堂は「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」と題するPRプロジェクトの契約を交わした。この契約には、約6700万円の構想費が含まれている。

筆者が、この構想費の「成果物」の開示を情報公開請求したところ、16日に次のような連絡が書面であった。

本件についても、基本的に「成果物」として開示できるものは無いとお話させていただいておりましたが、あらためて業務内容を整理確認し、「成果物」として次の2点を開示します。

a 仕様書3ページ(1)政府ブランコンセプト~②WEB戦略(ウ)に該当する「動画」2本(18歳選挙)

b仕様書3ページ(1)政府ブランコンセプト~②WEB戦略(オ)に該当するニュースレター21本

つまり構想費の中味とは、内閣府に対するアドバイスや提案に加えて、2本の動画(各30秒)と、ニュースレター21本(プレスリレース)ということになる。

■裏付けの仕様書

ところが契約書の「仕様書」によると、上記の「成果物」に加えてフェイスブックやツイッター等のコンテンツを作成することになっている。これらのコンテンツを博報堂が制作していれば、その「成果物」が記録として保存されていないことはおおよそあり得ないだろう。

念のために、「仕様書」から該当部分を引用しておこう。裏付けの証拠は、上記の仕様書(PDF)。

(エ)フェイスブックやツイッター等のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)について、効果的な運用方法を提案するとともに、訴求力の高いコンテンツを作成すること。

◇「間引き」分を請求

契約書で決められた業務を行わなかった場合、契約した価格から、一定の作業代金を差し引くのは常識である。さもなければ、差額分は寄付として受け取ったか、詐取したかのどちらかになる。

そこで博報堂が全額を請求したか否かを調べてみると、契約書の額と請求書の額が一致しており、「間引き」した仕事についても、料金を請求していたことが分かった。次に示すのが2つの裏付け資料である。

■契約額(契約書)赤表示の部分

■請求額(請求書)赤表示の部分

差額分が寄付であれば、寄付として博報堂が申告しているかどうかを調査する必要がある。していなければ脱税である。また、詐取したのであれば、詐欺ということになる。国家予算の横領にもなるだろう。

しかも、博報堂からの(有料の)アドバイスを参考に内閣府は、新聞広告の出稿やテレビCMの制作を博報堂へ次々と発注する決定を下していたわけだから、デタラメという他ない。内閣府の広報関係者は国家公務員として不適切だというのが、筆者の考えだ。

◇国家公務員法の改悪と官僚の腐敗

読者は、国家公務員の職務などを定めた国家公務委員法をご存じだろうか?もともとこの法律は、次のように国家公務員の「天下り」を規制していた。

職員は、離職後2年間は、営利企業の地位で、その離職前5年間に在職していた人事院規則で定める国の機関、特定独立行政法人又は日本郵政公社と密接な関係にあるものに就くことを承諾し又は就いてはならない

ところが第1次安倍内閣の時代、この条項は廃止となり、次の条項が加わったのである。

  第18 条の5 内閣総理大臣は、職員の離職に際しての離職後の就職の援助を行う。
2 内閣総理大臣は、官民の人材交流の円滑な実施のための支援を行う。

これは恐らく官僚を新自由主義の実働部隊に変質させるための暗黙の取り引きではないかと思われる。官僚が動かなければ、国策は進まない。特に内閣官房(総理直属の機関)や内閣府はその要だ。

実際、内閣府や内閣官房から、広告業務に携わった国家公務員が複数、博報堂にも再就職している。次の2名である。

■阪本和道氏(元内閣府審議官)

■田幸大輔氏(元広報室参事官補佐・広報戦略推進官)

■裏付け資料

構想費(約6700万円)を払ってPR戦略のアドバイスを受けた側が、アドバイスをした博報堂へ就職したわけだから、異常としか言いようがなく、状況を詳しく調べる必要があるだろう。その逆であれば、まだ、理解できるが。

国家公務員法で保護されても、別の問題があるのだ。