1. 総務省の国勢調査に関する新聞広告で博報堂に間引き疑惑、契約書では述べ25回の掲載、博報堂の回答は述べ12回

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2017年01月16日 (月曜日)

総務省の国勢調査に関する新聞広告で博報堂に間引き疑惑、契約書では述べ25回の掲載、博報堂の回答は述べ12回

メディア黒書では、博報堂と内閣府の取り引き疑惑に焦点を当ててきたが、実は他の省庁でも、検証しなければならない問題が浮上している。

そのうちのひとつが総務省が2015年4月1日に博報堂に発注した「国勢調査の広報に関する総合企画」である。契約額は6億円。大型のプロジェクトである。

これは国勢調査への国民の協力を呼びかけるPR業務で、ラジオスポットCM、新聞広告、交通広告、インターネット広告など、かなり多岐の分野に渡っている。

◇広告掲載回数25回の予定が12回に

国勢調査であるから、告示に始まり、書類の戸別配布があり、回答書の回収、末回答書に対する回答推進など、7つのプロセスがある。PR活動も、国勢調査の進捗と連動して実施することになっている。実施内容は契約書の一部である仕様書に明記されている。

さて、新聞広告についていえば、第2ステージ「調査関係書類配布の告知期間(9月1日~30日)」から、第6ステージ「未回答者の回答促進期間(10月8日から20日まで)」のそれぞれで、新聞広告を掲載する契約になっている。

掲載新聞については次のような契約になっている。

各時期に全国紙5紙の朝刊に掲載すること。

上記写真参照

つまり第2ステージから第6ステージまで、5回の掲載を全国紙5紙に掲載する契約になっているのだ。掲載回数は延べ25回である。

ところが全国紙の縮刷版を使って、実際に広告が掲載されたかを調査したところ、契約書の仕様書どおりに掲載されていないことが分かった。半分以上が掲載されていなかった。公共広告の「間引き疑惑」が浮上したのである。

◇博報堂の回答

そこで博報堂に問い合わせたところ、「延べ12紙に広告は掲載されています」という回答があった。回答の全文は次の通りである。

ご指摘の「5回の記事下広告の掲載」というのは、
「全国紙5紙の朝刊に掲載すること」という記載のことを、おっしゃっていらっしゃいますでしょうか。

実際の出稿は以下のとおりです。
既に新聞に掲載された、言わば公開情報ですので、当社からご回答申し上げます。

①8月24日 朝日新聞(全国朝刊)、毎日新聞(全国朝刊)、読売新聞(全国朝刊)、日本経済新聞(全国朝刊)、産経新聞(全国朝刊)5紙に全2段の新聞広告を掲載。

②9月17日 読売新聞(全国朝刊)に連載漫画下に広告を掲載。

③10月1日 朝日新聞(全国朝刊)、毎日新聞(全国朝刊)、読売新聞(全国朝刊)、日本経済新聞(全国朝刊)、産経新聞(全国朝刊)5紙に半5段の新聞広告を掲載。

④10月8日 読売新聞(全国朝刊)に連載漫画下に広告を掲載。

以上、延べ12紙に広告は掲載されています。
①~④は広告原稿の内容も異なります。ご確認いただければと思います

よろしくお願いいたします。

筆者の解釈では、掲載回数は延べ25回でなければ契約に違反している。(全国紙5紙に各5回の掲載)それ以外に解釈できない。もちろん途中で変更になった可能性もあるが、筆者は、契約がきわめて曖昧に解釈されている印象を受ける。契約は表向きのもので、内容を厳守する必要がないという暗黙の合意があるのではないか?

この問題については、現在、総務省に対して契約の成果物を開示するように申し立てている。

◇郵政事件

かりに契約内容が守られていなかったとすれば、総務省は博報堂に対して入札停止の処分を取るべきだろう。郵政事件では博報堂の関与が指摘された2010年、総務書は、事件の報告書を作成している。本来は、総務省は、この時点で入札を禁止すべきだったのだ。

 ■郵政事件の調査報告書(博報堂に関する記述は29ページから)

※郵政の職員が博報堂から繰り返し接待を受けていた事実、年間の発注が200億円を超えていた事実、などが記録されている。

郵政事件に関して総務書が博報堂にどのような処分を下したのかも、筆者は調査していく方針だ。