1. 「共謀罪とセットになった東京五輪」は辞退しかない

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2017年01月13日 (金曜日)

「共謀罪とセットになった東京五輪」は辞退しかない

執筆者:本間龍(作家)

かつて昭和の人気者を指す「巨人・大鵬・卵焼き」というフレーズが流行ったことがあったが、これからは嫌われ者を指す言葉として「五輪・電通・共謀罪」を使うようにしてはどうか。

安倍首相は10日、共同通信社とのインタビューで「(共謀罪を)成立させなければ、テロ対策で各国と連携する国際組織犯罪防止条約が締結されず2020年東京五輪・パラリンピックが開催できない」と語ったと報道されたが、さすがにこれには驚いた人が多いようだ。

なにせ安倍本人が五輪誘致の際に「東京は世界でもっとも安全な都市です」と大見得を切っていたのだし、その後も共謀罪の必要なんぞにはひと言も触れていなかったのだから、何をいまさら「成立しなければ開催できない」などと言うのか、さすがに「息をするように嘘をつく」男の面目躍如である。

◇共謀罪、拡大解釈の危険性

この法案は過去3度も提出されたがその都度廃案になり、あの小泉元首相でさえ躊躇した「平成の治安維持法」だ。ひとたび成立を許せば、治安当局の拡大解釈で政府に反対する者は誰でも逮捕できるようになる危険性を秘めている。昭和の治安維持法も当初は共産党などの反政府組織を取り締まる為と導入されたが、後に警察や特高が拡大解釈して罪のない市民をも大量に獄に送る原動力となった。

まともにやれば世論の厳しい反対に遭うと考えての安倍の「五輪抱き合わせ」発言だったようだが、昨年来の五輪自体の予算膨張による不透明さ、不人気もあって、「ならば五輪なんてやめろ!」という声がネットを中心に急速に高まっている。そして、ここでまたもや登場してくるのが電通である。なにせ東京五輪とは、「電通の、電通による、電通のためのオリンピック」であるからだ。

電通は2020年東京五輪の全てを取り仕切っている。全てとは招致活動からロゴ選定、スポンサー獲得、現在放映されているテレビやラジオCMをはじめとする五輪PR活動、そしてこれから3年間、全国で開催される五輪関係行事、さらには五輪本番の管理進行等、文字通り全部である。そこに他の広告代理店は一切介在出来す、とにかく全てが電通の一社独占なのだ。

◇すでに3500億円を集めたJOCと電通

現在42社が決まっている東京五輪スポンサーも、全てが電通の一社独占契約である。これが何を意味するかというと、五輪マークがついているCMや広告、関連グッズには全て電通が介在し、その利益も全て電通に集中するということだ。
これは極めて異常な状況で、過去の開催国でこうした例はない。

スポンサーの数も異常だ。リオやロンドン五輪のスポンサーは一業種1社という取り決めがあり、13~15社だった。しかし東京五輪が決まると、電通はIOCに働きかけて一業種1社制を葬り、何社でもスポンサーになれるようにした。

その結果が異様なほどのスポンサー企業の発生である。現在12社が決まっているゴールドパートナーカテゴリーは5年間で1社150億、27社が決定しているオフィシャルパートナーは同じく60億円をスポンサー料として支払うから、JOCと電通は五輪3年前の段階ですでに3500億円を集めたと言える。そのうち約20%が電通の取り分になると思われ、なんとそれだけで700億の収益があがることになるのだ。

■スポンサー一覧

◇五輪開催CMの氾濫

だが電通はこれに満足せず、現在のゴールド及びオフィシャルパートナーの下にもう1つカテゴリーを増やし、さらに企業を集めようとしている。今でさえ五輪スポンサーを謳うCMに辟易しているのに、これから先は五輪開催までひたすら同じようなCMばかりが氾濫するようになる。もはやこれは悪夢としか言いようがない。

そして電通とJOCはこれだけのカネを集めながら、大会運営に必要な10万人以上といわれるボランティアを、全てタダで起用しようとしている。日本ではボランティアというと善意のただ働きという印象が強いが、語源は志願兵の意味であり、決して無料奉仕を指すものではないのだ。

昨年7月、組織委が「1日8時間、10日間以上できる」「採用面接や3段階の研修を受けられる」「外国語が話せる」「競技の知識があるか、観戦経験がある」などのボランティア要件を発表したが、あまりにも要求が高いのに無料奉仕が前提なため、ネット民から「ブラック過ぎる」などと総批判を浴びた。組織委は慌てて「まだ素案の段階」などと釈明したが、これが彼らの本音であることは間違いない。

灼熱の暑さとなる7月から8月の時期に、交通費も日当も支給せず、さらにもし熱中症で倒れても保険すらなく自己責任で済ませようなどと、それこそ善意を食い物にする詐欺行為に他ならない。そしてその現場を法令違反企業の烙印を押された電通が取り仕切り、開催のためには共謀罪が必要だなどと、まさに国家を挙げてのブラックジョークだ。もはや東京五輪は辞退するしかない。