1. 李信恵氏が「反訴」を取り下げて別訴を提起、鹿砦社の名誉毀損裁判、ヘイトスピーチ対策法の危険性

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2018年05月25日 (金曜日)

李信恵氏が「反訴」を取り下げて別訴を提起、鹿砦社の名誉毀損裁判、ヘイトスピーチ対策法の危険性

『カウンターと暴力の原理』(鹿砦社)など4冊の書籍の販売禁止や550万円の損害賠償などを鹿砦社に求めて、李信恵氏(文筆業)が大阪地裁に提起した「反訴」事件に新しい動きがあった。23日に「反訴」を取り下げ、新たに別の訴訟を起こしたことが分かった。別訴の内容は、現時点では明らかになっていない。

この裁判の発端は、2017年9月に、鹿砦社が李氏に対して、ツイッターなどで名誉を毀損されたとして、300万円と謝罪広告などを求める裁判の提起である。これに対して李氏は、2018年4月に「反訴」していた。今回、この「反訴」を取り下げ、別の裁判を起こした。さらに別訴と、本訴の併合審理を希望している。

【参考記事】鹿砦社通信

4月に李氏が起こした「反訴」では、4冊の書籍の販売禁止を求める請求項目があり、言論・出版活動の自由という観点から、批判の声があがっていた。ひとりの著名な文筆家が、4冊の書籍の販売禁止処分を求め、裁判所に厳しい「罰則」を求めた前例はない。書籍の中で、李氏自身が批判されているとはいえ、書籍の販売禁止は抗議の領域を出ているのではないか、との批判があった。

ちなみに鹿砦社が、名誉毀損とした李氏の表現には、次のようなものがある。

  「クソ鹿砦社の対立を煽る芸風には乗りたくないなあ。あんなクソに、(以下略)」

「鹿砦社って、ほんまよくわかんないけど。社長は元中核派?革マルは?どっち?(中略)クソの代理戦争する気もないし。」

◇ヘイトスピーチ対策法の裏面

公権力による言論活動の規制は、影のように忍び寄っている。皮肉なことに、その引き金となっているのが、差別の廃止を求める市民運動(広義のしばき隊)とヘイトスピーチを繰り返す極右グループの対立である。

ちなみに李信恵氏は、市民運動のリーダー的な存在で、反差別裁判も起こしている。李氏らの運動を受けて、2016年5月24日には、衆議院本会議で、「ヘイトスピーチ対策法」が成立した。

しかし、この法律には、罰則規定がない。心の自由を法律で規制することは不可能であるからだ。ところが最近、「ヘイトスピーチ対策法」に罰則規定を設ける動きとも推測できる動きが浮上している。少なくともそれを正当化する時代の空気が生まれはじめている。

たとえば、神奈川県川崎市に住む在日の女性が、ツイッターで脅迫された事件に、その兆候がみえる。川崎署は女性を脅迫した男性を書類送検した。それを伝える『神奈川新聞』の記事を引用してみよう。

  同署によると、男性は容疑を認めている。男性は「極東のこだま」のアカウント名で、レイシスト(人種差別主義者)を名乗り、崔さんの近所に住んでいるかのように装っていた。ヘイトスピーチ反対運動に取り組む崔さんに対するヘイトスピーチを2016年2月からツイッターで始め、代理人弁護士によると、1年半の間で、ヘイトスピーチの投稿は数百件に上ったという。

  都内で記者会見した崔さんは「長い間、ネットで攻撃され、生きるのを諦めたくなる瞬間もあった」と振り返り、「匿名であっても許されることなく、刑事責任が問われるという社会の正義が示されることを望む」と話した■出典

注目してほしいのは、最後の節、筆者が太字で強調した部分である。差別的な発言に対して、脅迫を理由に罰するのであれば問題ないが、今後、かりに「ヘイトスピーチ対策法」に罰則規定が加えられた場合、言論弾圧に悪用される可能性が極めて高くなる。

川崎の事件でも明らかなように、差別的な発言や暴力は、現行の法律でも十分に取り締まることができるのに、あえて「ヘイトスピーチ対策法」を新設したわけだから、そこに何らかの別の意図があると考えるのが自然だ。

皮肉なことに、この法律の成立の奔走したのが広義のしばき隊と共闘している有田芳生議員である。

言論の内容がどうであれ、そこに反映している人間の心の自由を規制する法律のあり方は慎重に考察する必要があるのだ。

私見を言えば、「釘バット」を凶器として認定する法律を作る方が先である。

 

写真:「釘バット」を持った有田芳生氏