1. 心の自由を規制する誤り、ゴールは全体主義、セクハラ報道からヘイトスピーチまで、深刻な社会病理

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2018年05月10日 (木曜日)

心の自由を規制する誤り、ゴールは全体主義、セクハラ報道からヘイトスピーチまで、深刻な社会病理

このところメディアで盛んに報じられている問題のひとつに、セクハラがある。TBSの元記者からレイプされたとする伊藤詩織氏による内部告発が引き金となり、レイプの域を超えて、それよりもハードルが低く材料が多いセクハラが問題視されるようになったのだ。

と、いうよりもかなり前から蔓延していた実態を、メディアがようやくクローズアップしたために、女性に対する人権侵害事件が近年急増しているような、イメージが広がったと言ったほうが適切かも知れない。

伊藤氏の事件について、ジャーナリスト・片岡健氏が興味深い指摘をしている。

伊藤氏が山口敬之氏を相手取って東京地裁に起こした民事訴訟について、その記録を「取材目的」で閲覧していた者は今年1月の段階でわずか3人だった。■出典

主要なメディアは豊富な人員がいながら、正確な裏付け調査を行わないまま、報道してきたということである。

◇重い社会病理


 ヘイトスピーチの問題も、一時期、メディアの大きな話題になった。この問題を告発したのは、広義の「市民運動」の面々である。しかし、社会通念からすれば、彼らは行き過ぎた方法で「レイシストを許さない」運動を展開してきた。釘バット左の写真(■出典)が何よりもそれを象徴している。

さらに名誉毀損裁判の提起も増えている。提訴により対抗言論を抑圧するのが主要な目的である。いちいち具体例は引かないが、広くツィターを検証してみると、「これは名誉毀損だな」、とか、「裁判ものだな」とかいったツィートに行き当たる。しかも、投稿の主が右派とか左派には関係なく、あたりまえの感覚で名誉毀損裁判の提起をほのめかして、対抗言論に脅しをかけているのだ。

名誉毀損裁判ではないが、特定の言論活動に対して、BPO(放送倫理・番組向上機構)に訴えた「文化人」もいる。

深刻な社会病理だろう。

こうした状況を逆手に取るかのように、巨大な国家権力を持つ検察が名誉毀損を理由に特定の言論を刑事事件として抑圧しはじめている。起訴の対象としているのが左派の言論であっても、右派の言論であっても許されることではない。

【参考記事・メディア黒書】検察が在特会元幹部を名誉毀損で在宅起訴、人間の内心を法律で規制する危険性、ヘイトスピーチを逆手に取った言論規制の強化

◇心の自由を規制

筆者は、もちろんセクハラやヘイトスピーチが容認されてもいいとは考えていない。他人の名誉を毀損することにも反対だ。しかし、同時にこれらの問題は、人間の心の自由にかかわる特殊な問題であるから、暴力で、あるいは法律で、それを強制的に改めさせるのは度が過ぎていると考えている。心の自由は強制できない。それを認めることが、民主主義の社会である。

たとえ正しい主張であっても、法律と暴力による強制が広がっていくと、それはいずれ全体主義やファシズムへと変質する。冒頭で紹介している写真が象徴する悲劇が日本にも到来しかねない。言論にかかわる問題に司法の介入を招いてはいけない。

ちなみにこの写真の出典は、有田芳生議員のフェスブックである。■出典

金正恩氏については、南北融和へ向けた動きを高く評価する一方で、疑問も多い。たとえば殺人による元政府高官の粛正である。おなじく殺人による金正男氏の粛正である。これらはいずれジャーナリズムが検証しなければならない重大問題である。朝鮮が民主化された後には、当然、裁判でも裁くのが筋だろう。