1. 「しばき現場」の録音からテレ朝「セクハラ現場」録音まで、 録音記録に基づかない主張、被害者が逆に冤罪捏造者にでっちあげられる危険性

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2018年04月20日 (金曜日)

「しばき現場」の録音からテレ朝「セクハラ現場」録音まで、 録音記録に基づかない主張、被害者が逆に冤罪捏造者にでっちあげられる危険性

財務省の福田事務次官が、辞任後もセクハラを否定し続けている。この事件の有力な根拠になっているのは、セクハラ現場の録音記録である。録音がなければ、記事にはならなかったはずだ。福田氏が名誉毀損の裁判を起こした場合、セクハラがあったことを立証しなければならないのは、被告(おそらくは新潮社とテレ朝の記者)の側になるからだ。

この事件に象徴的に見られるように、最近、明らかな事実を公然と否定する人々が増えている。その典型は、改めていうまでもなく、ナチによるガス室はなかったとか、南京大虐殺はなかったなどという暴言である。

広義のしばき隊事件(M君リンチ事件)でも、事実を捏造する動きがある。

◇深夜の酒場で開かれた「会議」で暴力

この事件は、既報したように、差別に反対するカウンターグループのなかで、金銭に関するトラブルが発生し、深夜の酒場で開かれた「会議」とも、「糾弾会」とも解釈しうる集まりで、大学院生のMさんが、暴行を受けて瀕死の重傷を負った事件である。

暴行に加わった者が刑事処分を受けたあと、M君は損害賠償を求める民事訴訟を起こした。判決は、去る3月19日に下された。裁判所は、「会議」の場にいた5人のうち、3人に金銭による賠償命令を下した。M君が勝訴したのである。ただし、「共謀」を否定した判決内容には不服があり控訴した。

ところが判決が下った19日の夜、神原元弁護士(自由法曹団常任幹事、しばき隊の元隊員、『ヘイトスピーチに抗する人々』[新日本出版社]の著者)が、酒場から次のようなツィートを発信した。

「しばき隊リンチ事件」「主水事件」「M君事件」等と称された事件に判決が下りた。結論は、共謀なし。李信恵さんの責任はなし。一部に誤った認定はあったが、原告のストーリーは全て否定された。「しばき隊がリンチ事件を起こした」等とデマに踊った人々は猛省すべきである。今後、誹謗中傷は許さない■出典

このツィートの最大の問題は、「しばき現場」で録音された音声記録に基づいて立証できる客観的な事実を否定している点である。「原告のストーリーは全て否定された。『しばき隊がリンチ事件を起こした』等とデマに踊った人々は猛省すべきである。」と叫んでいるのだ。

神原弁護士が、「会議」の現場にいた李信恵氏の暴力については否定されたという趣旨で、舌足らずなツィートを投稿したとしても、判決は次の事実関係を認定しているので、「全て否定された」ことにはならない。

 被告普鉉が原告を迎えに出て、同月17日午前2時頃、原告及び被告普鉉が本件店舗内に入ったところ、出入口に最も近い席に坐っていた被告信恵が、原告に対して「なんやのお前」などと言いながら、原告に詰め寄り、その胸倉をつかんだ。これに対し、被告普鉉が、直ちに「まあまあまあ、リンダさん、ごめんな。」と言い、被告金も「店やし、店やし。」などと言いながら、被告信恵を制止して、原告から引き離した。 

◇冤罪捏造者にでっちあげ

客観的な事実を否定すると、逆にこの事件を告発したMさんが、冤罪捏造者にでっちあげられかねない。それを避けるために、Mさんは録音記録を大切にしているわけだが、記録が残っていても、我田引水にそれを解釈することで、被害者が加害者に変質しかねないのである。その意味では、神原弁護士の責任は重大だ。

弁護士の中には、「無罪を請け負」っている人もいるようだ。真実は犯罪者なのに、無罪を請け負うのだ。当然、無理がある。そこで起こるのが、虚偽の事実を裁判所に提出して、それを前提に主張を展開する手口である。このようなやり方は、弁護士職務基本規定の75条で禁止されているが、実際は増えているようだ。弁護士会が厳しく監視しないからだ。

こういう問題こそ、「市民運動」で正す必要があるだろう。被害者を冤罪捏造者にでっちあげてはいけない。

※冒頭の動画は、Mさんの承諾を得ましたので、自由に拡散して下さい。