1. 煙草の副流煙をめぐる極論、法律で集合住宅全体を禁煙にすべきだという考えの誤った論拠

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2025年05月18日 (日曜日)

煙草の副流煙をめぐる極論、法律で集合住宅全体を禁煙にすべきだという考えの誤った論拠

煙草の副流煙が第3者に及ぼす影響についての議論が活発になっている。法律で集合住宅全体を禁煙にすべきだという考えも検討され始めている。改めていうまでもなく、その引き金のなったのは、横浜副流煙裁判である。

この裁判は、ミュージシャンの藤井将登さんが吸った煙草の煙により健康被害を受けたとして、藤井さんの隣人家族3人が、藤井さんに対して4518万円の損害賠償を求めたものである。詳細については、次の事件概要を参考にしてほしい。

■事件の概要

しかし、家族3人の訴えは棄却された。それどころか判決の中で裁判所は、「受動喫煙症」と診断した診断書そのものに根拠がないことや、日本禁煙学会がみずからの政策を実現するために喫煙撲滅運動を展開したり、「受動喫煙症」の診断基準を決めていることなどを認定した。単に藤井さんを発生源とする副流煙と3人の健康被害の因果関係が立証できなかいから、訴えを棄却したというだけではなかったのだ。喫煙撲滅運動そのものに悪意があったことを認定したのである。

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喫煙撲滅運動を推進しているひとや、それに共感しているジャーナリストの記事を読んで感じることのひとつに、事実の裏付けが乏しい点である。煙草による被害を誇張する傾向がある。(※筆者は、非喫煙者である)。たとえば次の記事である。

「お隣さん」から致死性の「タバコ煙」が我が家へ。近隣住宅からの受動喫煙問題を考える

この記事に、次のような記述がある。

非喫煙者の家庭では、自宅に厳格な禁煙ルールをもうけていることが多い。例えば、喫煙者の友人が訪問しても自宅ではタバコを吸わせないなどだ。

こうした対策を講じていても近隣からのタバコ煙は容赦なく禁煙宅へ侵入する。韓国ソウル市内の集合住宅に住む禁煙家庭の受動喫煙状況を調べた研究によれば、1年間に約3/4の禁煙居住者が受動喫煙を1回以上経験していたという(※5)

 「※5」の論文を確認したところ、調査方法が自己申告によるものであることが分かった。問診の類いである。非喫煙者は煙草が嫌いなわけだから、アンケート形式の質問となれば、副流煙による被害を誇張する傾向があることは容易に想像できる。現に、横浜副流煙事件では、家族3人による被害の誇張や妄想が大事な争点になったのである。

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横浜副流煙事件で藤井さんが勝訴したのは、横浜地裁が判断を誤ったからではない。日本禁煙学会に喫煙撲滅という政策目的があった上に、藤井さんが、副流煙の外部流失を防ぐための十分な対策を取っていたからである。

窓を開けて煙草を吸えば、その副流煙が近隣家庭に入り込むことは言うまでもなし、近隣住民のコチニンの濃度も高くなるのは当たり前である。窓を閉めた状態で、喫煙したときの考察が欠落している。

従って、法律で集合住宅全体を禁煙にすべきだという考えは、極論以外の何者でもない。こうした思考の傾向を禁煙ファシズムと呼ぶ。実は、これはアルコールの類が病気の引き金になるので、法律で禁酒すべきだという考えと同じ原理なのだ。

■写真出典