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2025年03月14日 (金曜日)

中国レポート②:遼寧省広佑寺、宗教が禁止されているというのは事実か?

日本で定着している中国に関する情報には、誤ったものがかなり含まれている。たとえば宗教が禁止されているという情報である。社会主義の国では唯物論哲学が主流なので、その対極にある観念論哲学の典型である宗教が禁止されているという机上の論理が広がった結果ではないかと思うが、これは事実ではない。

昨年(2024年)の9月、筆者は中国遼寧省の広佑寺を訪れた。広佑寺は、漢代に建立された名刹(めいさつ)で、明の時代に仏教の聖地として繁栄した。

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2025年03月05日 (水曜日)

中国レポート:好調な経済、破綻はあり得ない、現実の世界と西側メディアが描く空想の世界の乖離

階段を這うように登る4つ足のロボット。荒漠たる大地を矢のように進む時速450キロの新幹線。AI産業に彗星のように現れたDeepSeek-r1。宇宙ステーションから月面基地への構想。学術論文や特許の件数では、すでに米国を超えて世界の頂点に立った。中国の台頭は著しい。2024年度の貿易黒字は、9921億ドル(約155兆円)を記録した。貿易には相手国があるので、数字を偽装することはできない。

筆者は、2024年9月から、2025年1月までの5カ月のあいだ中国の遼寧省に滞在して、この国の日常を凝視した。

この町に住んで最初に筆者が感じたのは、豊饒な食である。日常の中で食生活にまつわる場面が展開している。団地のマンションは、ベランダを台所に割り当てたものが多く、冬には湯気で白く曇ったガラスの向うで動いている人々の姿が浮かび上がる。

市場では、大胆に食材が捌かれる。鮮魚売り場では、エプロンをした店員が、プラスチック製の塵取りで、エビや貝を掬い取って袋に詰める。日本のように少量のパック詰めにはしない。精肉店では店員がナタのような包丁を振り上げて、あばら骨が付いた豚肉を砕き、それをビニール袋に詰めて客に手渡す。大量に購入して、冷凍庫で保存したり、親戚に分けしたりする。少量では販売しない店もある。
果実店売場では、店員が手の平をがんじきのようにして、大きなビニール袋にミカンを掻き入れる。食品を販売するスケールが、日本に比べてはるかに大きい。

市場近辺の路地には、露天商らが店を設置している。屋台を構えた店だけではなく、歩道に段ボールや板を敷いて、その上に果実などを並べている所もある。街路樹と街路樹の間にロープを張って、そこに衣類をかけて露店販売をしている店もある。

露天商といえば日本では貧しいイメージがあるが、中国では一概にそうとも言えない。「農家ですから、われわれよりも金持ちですよ」と言う人もいる。露店で販売されている果実は、マーケットで販売されているものよりも品質が高い傾向がある。実際、味覚にほとんど外れがない。露店商が成り立つゆえんである。

インターネットを駆使した販売は露店でも定着している。電子マネーの決済はいうまでもなく、メールマガジンで客に、商品情報を送る店もある。外見は質素に見えても、路地裏にまで近代化の波が押し寄せている。もはやひと昔まえの中国ではない。

ちなみに現金も流通している。電磁マネーしか使えないという情報は正確ではない。

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2025年02月21日 (金曜日)

多言語国家としての中国を理解していないTBS報道特集の暴論

極右からリベラル左派まで、音律が狂ったカラオケのように中国についての見方が歪んでいる。これらの層(セクト)を形成する人々は、声高々に「反中」を合唱している。背景には、新聞・テレビによる中国報道を過信して、現地に足を運んで事実を確認したり、自力で海外の多様な情報を収集しない姿勢があるようだ。一種の情報弱者にほかならない。

2025年2月8日、TBSは、報道特集で「中国による『同化政策』…言葉をめぐって揺れる『2つのモンゴル』」と題する番組を放送した。中国のモンゴル自治区で、中国共産党がモンゴル語よりも中国語を重視する教育を進めていることを捉えて、漢族への「同化政策」だと批判する内容だった。

この番組の問題点はいくつかあるが、最も根源的な間違いを指摘しておこう。それはTBSが中国語と北京語を混同し、それを前提として自論を展開している点である。議論の前提に重大な誤解があるわけだから、番組の最初から最後まで論理の歯車がかみ合っていない。最初にストーリを組み立て、それに整合する事実だけを我田引水にこじつけたような印象がある。

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