1. 「CM休止→博報堂による料金の徴収」が発覚、多量の放送確認書代筆も明るみに

大手広告代理店に関連する記事

2016年06月20日 (月曜日)

「CM休止→博報堂による料金の徴収」が発覚、多量の放送確認書代筆も明るみに

2011年の東日本大震災の直後、通販番組を放映してないにもかかわらず、番組を仲介した広告代理店・博報堂がクライアントから料金を徴収していた事が分かった。大震災の直後からCMが自粛され、放送が中止になったり、AC(公共広告機構)に差し替えられたことは、読者も記憶しているだろう。。「番組(スポットCMを含む)の休止→料金の請求」は、震災のどさくさの中で発生したようだ。

この不正徴収が発覚する引き金となったのが、博報堂が発行した1枚の書面である。アスカコーポレーション(本社・福岡市)に宛てた書面で、「東日本大震災に伴う特別編成による番組休止のご報告」というタイトルになっている。

博報堂はアスカコーポレーションに対して、この書面を送付し、2011年3月15日の「27:42~28:12分」の時間帯に放送予定だった「噂のお買い得セレクション」(朝日放送)の放送を休止したことを伝えた。

■裏付け資料

ところがアスカコーポレーションへ宛てた3月31日付けの「請求書」では、3月15日の当該番組が請求対象になっている。請求額は100万円。

■裏付け資料

※「御見積書」となっているが、これは請求書を併用したものである。通常、「御見積書」は、企画の段階で提示するものだが、博報堂は事後に提出して請求書を兼ねていたという。実際、3月放送分の「御見積書」の日付けが3月31日になっている。

不測の事態でスポットCMや番組が放送されたなかった場合、通常は他の時間帯に振り替えられることが多いが、アスカコーポレーションによると、放送されないまま広告代理店から料金だけを徴収されていた例がほかにも多数あるという。

◇CMコードの持つ重要な意味

クライアントはスポットCMや番組が放送されたかどうかを、テレビ局が発行する放送確認書によって確認する。放送確認書にCMコード(CMを流した順番に自動的に作成される)が入っていれば、放送した証明になり、CMコードがなければ、放送されていなことになる。

テレビ業界がCMコードのシステムを導入したのは、過去にスポットCMを間引きする事件が静岡第一放送などで発生したのを受け、それを防止する目的があった。そのためにCMコードの刻印を、人的な操作から切り離し、IT技術に頼った経緯がある。

従って、CMコードが刻印されていない放送確認書が、クライアントに送付されてきたなら、それは当該のスポットCMは放送されていないことを通知していることになる。

「噂のお買い得セレクション」の放送確認書について筆者が取材したところ、不思議なことに、放送確認書が存在しないことが分かった。その理由として、スポットCMを仲介した博報堂は前出の書面、「東日本大震災に伴う特別編成による番組休止のご報告」の中で、次のように説明している。

※朝日放送は放送確認書が出力されない為、局との確認後弊社が代筆し作成しております。

◇放送確認書の代筆

「朝日放送は放送確認書が出力されない」というのだ。にわかに信じがたい話なので、アスカコーポレーションに問い合わせたところ、上記の文言が入った博報堂の書面は、他にも複数あることが分かった。

朝日放送に関しては、震災時の「休止→請求」が発覚した番組の放送確認書だけではなく、博報堂が代筆で作成したスポットCMの放送確認書が複数ある。代筆の理由は、やはり「朝日放送は放送確認書が出力されない為」である。次に示すのがその一例だ。

■博報堂が代筆した放送確認書の例

もちろん、放送確認書には、CMコードは刻印されていない。博報堂は放送局ではないので、現在の放送確認システムの下では、当たり前のことだが、これでは当該のスポットCMが本当に放送されたか否かを確認しようがない。代筆では、放送確認にはなっていないのである。

システム上の不具合が原因でこのような珍事が発生した考えるのもおかしい。と、いうのも2009年2月から2012年8月までの期間、大量の「代筆」放送確認書が発行されているからだ。一時的な不具合は発生しても、放送確認書の発行が困難な時期が3年半も続くことはあり得ない。

「朝日放送は放送確認書が出力されない」とする博報堂の文言そのものが、不自然と言わなければならない。

【参考記事】

   岩手県施設、指定管理者(博報堂)が入館者数を水増し バイト使い

博報堂による「過去データ」流用問題、編集の実態、アスカ側は情報誌のページ制作費だけで7億円の過剰請求を主張