1. 博報堂による「過去データ」流用問題、編集の実態、アスカ側は情報誌のページ制作費だけで7億円の過剰請求を主張

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2016年05月30日 (月曜日)

博報堂による「過去データ」流用問題、編集の実態、アスカ側は情報誌のページ制作費だけで7億円の過剰請求を主張

電通のオリンピック「賄賂」の疑惑や、博報堂による過去データの流用問題など、大手広告代理店の業務の実態が輪郭を現してきた。

既に述べたように、博報堂と通販のアスカコーポレーション(本社・福岡市)の間で、請求額を巡る大規模な係争が勃発している。昨年、博報堂がアスカに対して約6億1000万円の未払い金を請求する裁判を起こしたのに対して、アスカも今月になって、博報堂に対して約15億3000万円の過剰請求費の返済を求める裁判を起こした。

■参考記事:博報堂に対して約15億3000万円の不当利得返還請求、通販のアスカコーポレーションが提訴

本稿では、アスカが起こした裁判で、同社が指摘している情報誌制作に見る過去データの流用問題を検証してみよう。もちろん、以下に紹介するのはアスカ側のデータに基づいた記述である。しかし、筆者が検証した限りでは、信憑性が高い。後に紹介するように、画像の証拠はごまかせない。

なお、博報堂の広報部に対してもたびたび取材を申し入れているが、係争中を理由に拒否している。

◇制作費の内訳

アスカは通販会社である関係で毎月、商品のカタログ雑誌を制作する。その制作を請け負っていたのが博報堂だった。昨年、岩手県大槌町が博報堂に発注した震災の記録誌で、過去データの流用(パクリ)が発覚する事件などがあり、アスカは提訴されたのを機に、過去の博報堂関連の仕事と請求実態を洗い直したところ、不自然な箇所が次々に発見された。

情報誌の制作には、タレントの起用から、商品の写真撮影、それにページのデザインなど、さまざまな業務が絡んでくるが、ここでは「情報誌のページ制作」(編集の分野)だけに焦点を絞ってみよう。

アスカ側のプレスリリースによると、1ページあたりの単価は、制作内容の違いによって次のように分類されている。

【新規ページ】 10万円/1ページ。画像も説明文のすべて新規。

【リデザインページ】 7万円/1ページ。デザインの50%以上を変更。

【リライトザインページ】 4万円/1ページ。文章をほぼ書き直したページ。

【調整ページ】0円/1ページ データ転用が可能。

◇通販情報誌『ASKA』に見る過去データの流用

さて、実際に完成した情報誌はどのようになっていたのだろうか。
具体例として取り上げるのは、通販情報誌『ASKA』(2011年)の11月号と12月号である。両者を比較する中で、博報堂の業務の実態が浮上した。

12月号のページ内訳は次のようになっている。

新規制作ページ   :63ページ (完全に新しいページ)
リライト・リデザイン:52ページ  (2分の1以上を変更)
表紙        :1ページ    (完全に新しいページ)

上記の制作条件からすれば、12月号の各ページは、11月号と比較したとき、少なくとも50%以上の変更点が確認できなければ、契約に違反していることになる。

実際に2つの号を比較してみよう。左が11月号で、右が12月号である。

 

 

■プレスリリース分1PDF

  ■プレスリリース分2PDF

■プレスリリース分3PDF

ここで紹介したのは、ほんの一部である。

◇「ページ制作費」だけで7億6000万円

アスカ側がページの内容が契約とは異なっていたことを前提に「ページ制作費」で受けた過剰請求の額は(別冊の除く)は、訴状によると7億6000万円にもなる。内訳は次のエクセルに示した。ただし、これはアスカ側の主張であり、博報堂が取材を拒否しているために、博報堂の主張は分からない。メディア黒書は、申し出があれば、常に反論の機会を保証する。

■過剰請求額のリスト(情報誌・別冊は除く)

※裁判資料をベースにメディア黒書で制作

金額が異常に高いのは、もともと大手広告代理店の請求額は、編集プロダクションと比較して、比較にならないほど高額だからだ。職能の差が請求額の差になるからだ。

◇博報堂は取材拒否

筆者は博報堂に対して取材を申し入れた。

藤井様

 お世話になっています。
 フリーランスライターの黒薮哲哉と申します。

 貴社とアスカコーポレーションの係争を取材しております。このたびアスカ側から
訴訟が提起されたのを機に、貴社の主張も取材させていただけないでしょうか。
 特にわたしは新聞広告・折込広告を重点的に取材してきた関係で、この分野については
お尋ねしたい部分が数多くあります。

 ご検討いただくようにお願い申し上げます。  黒薮

博報堂からの回答は次の通りだった。

黒薮さま

お世話になっております。
博報堂広報の藤井です。

 ご連絡を頂戴いたしました件です。
先般お電話を頂戴した際にもお話し申し上げましたことと同様、
係争中ですのでご取材に関しましてはご遠慮申し上げます。

ご依頼にお応えできず恐縮ではありますが、ご理解のほど
お願いいたします。

博報堂広報室 藤井