1. 博報堂が東京・福岡の「渡航費」として165万円を請求、暴露される広告代理店による過剰請求問題

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2016年10月06日 (木曜日)

博報堂が東京・福岡の「渡航費」として165万円を請求、暴露される広告代理店による過剰請求問題

先月、電通が自社のPR業務の中で過剰請求があったことを認めたのを機に、広告業界の闇が輪郭を現しはじめている。

周知のように、ウェブサイト『ビジネスジャーナル』(8月25日)が、博報堂と係争中のアスカコーポレーション(以下、アスカ)・南部昭行社長へのインタビューを掲載した。この中に博報堂による請求の水増しについて次のような質問と回答がある。

---具体的には、どのようなかたちで水増しが行われていたのでしょうか。

南部 たとえば「渡航費」という部分です。東京から福岡までの出張経費が渡航費として1回100万円以上の単位で請求されていました。ほかの取引先は、そのようなことは一度もなかったので、びっくりしました。もちろん、そうした費用を請求するなどという話は事前になく、正直呆れました。《全記事》

この件に関して、筆者が取材したところ、「渡航」に関連した請求に複数の疑惑があることが分かった。

◇「ぼったくり」という悪癖

まず、2006年4月15日付け請求書に渡航費の請求がある。請求の名目は、「休眠掘り起こし冊子渡航費」。請求額は、165万円。

「休眠掘り起こし冊子」とは、アスカの商品を購入したクライアントのうち、その後、顧客層ではなくなった人々を再発掘するための冊子のことである。その編集会議に出席するために要した旅費である。つまり東京本社の博報堂の営業マンが、福岡にあるアスカ本社へ「渡航」するための費用である。

通常の航空運賃は、高くても5万円程度。スカイマークであれば2万円代である。ところが博報堂が165万円を請求した事実が請求書に記録されている。

これについて、アスカ側は次のように話している。

「博報堂が当社に参入したころ、情報誌制作の会議に参加することを希望してきました。その際、博報堂の営業マンは、『全て無料で行いますので、勉強のために会議に参加させていただけませんか?」と南部社長に話をしました。その結果、参加が許可されました。彼は東京から参加していましたが、1回も提案が採用されたことはありませんでした」

アスカによると、渡航費を博報堂が自分で負担することが会議に参加する条件だったという。たとえこのような取り決めが書面で行われていなかったとしても、165万円という額は尋常ではない。請求額に疑問がある。

さらに上記の請求書と同じ2006年4月15日付けで、「店舗取材渡航費」
の名目で約37万円の請求がある。アスカの店舗を取材するための渡航費であるが、アスカによると当時、店舗の取材は電通九州が行っていたという。

「渡航費」として請求された2つの項目の合計は、200万円を超える。これらは未だに訴訟にはなっていない。

■裏付け資料となる博報堂の請求書

なお、「渡航」とは普通は海外に行くことを意味する。経理用語まで間違っている。それとも「渡航」と記さなければ、165万円との整合性が取れないから、故意に「渡航」と書いた可能性もある。これも騙しの手口かも知れない。

◇宿泊費とキャンセル料をどう評価するか?

博報堂は、電通と東急エィジェンシーをアスカから撤退させ、2008年からPR業務を独占した。その後、2010年にも検証に値する出張関連の請求を行っている。

発端はフランスとイタリアへのロケチームの出張だった。フランス滞在途中にイタリアへ行く予定だったのだが、イタリア出発直前にアイスランドの氷河、エイヤフィヤトラヨークトルが噴火して、上空に火山灰を噴きあげた。その影響で、航空網が大混乱に陥った。

当然、ロケチームのスタッフも足止めをくった。

その時の航空券変更に伴う料金や宿泊代の請求が検証対象になる。

たとえば5月31日付けの請求書によると、1名の「渡航費キャンセル料(パリ・ボローニャAIR)」が12万8000円になっている。また、「渡航費キャンセル料(ミラノ・ボローニャ鉄道)」が、1万6000円。

これらの請求額をどう評価するかは、現地の事情を知らない筆者には難しいので、当面は読者に委ねよう。

■裏付け資料となる博報堂の請求書

ちなみにまだ訴訟にはなっていないが、過去の取引の精査が進むにつれて、不正請求を訴因とした訴訟がアスカ側から次々と起こされる可能性が高い。