1. 博報堂事件、住所を間違った「にせもの」放送確認書の疑惑が浮上

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2016年08月08日 (月曜日)

博報堂事件、住所を間違った「にせもの」放送確認書の疑惑が浮上

博報堂とアスカコーポレーションの係争で、最も注目されているテーマのひとつが、CMの「間引き」疑惑である。CMの「間引き」とは、CMを放送する契約を放送局が履行せず、「放送した」と偽り、料金だけを徴収する不正行為である。

1990年代の後半に、福岡放送、北陸放送、それに静岡第一テレビでCM「間引き」が発覚して、テレビ界を揺るがした。

これを受けて民放連などが、対策に乗り出し、コンピュータを使った防止システムを導入した。コンピュータが人間の不正を監視するよになったのである。

広告主を不正から守る制度が構築されたのである。

おおまかな使用のステップは次の通りである。、放送予定のCMに10桁のCMコードを付番する。それをコンピュータに入力する。CMが放送された順番に、機械が放送確認書の10桁CMコードを印字する。

2006年からは、10桁のCMコードが付番されていないCMは受け付けないのが原則になっている。

CMが放送されなかった場合は、もちろんCMコードは印字されない。災害などでCM放送が中止になりCMコードが非表示になった場合は、広告代理店が広告主に事情を説明して理解を求め、放送時間を変更してCMの放映回数を増やすなどの「ペナルティー・サービス」が実施される。

この機械によるCM「間引き」防止のシステムが導入された後、CMを放送せずに料金だけを徴収する事件は、過去のものになったと言われてきた。実際、わたしが関係者らを取材したところ、口を揃えたように、「今は、ありえない」という答えが返ってきた。

ところがアスカが自社で保有していた放送確認書を調べたところ、10桁CMコードが表示されていないCMが多量に発見されたのだ。メディア黒書でそれを確認したところ、その本数は現時点で1500件を超えている。これらのCMに対する「ペナルティー・サービス」が行われていなければ、詐欺ということになる。

◇放送確認書の住所が間違っている

しかし、10桁CMコード以前に、別の検証点も浮上してきた。そもそもアスカが博報堂を通じて受け取っていた放送確認書が、本物かどうかという点である。博報堂が偽装したものではないかという疑惑があるのだ。博報堂が取材を拒否しているので、現時点では、疑惑の域をでないが、調査すればするほど不自然な事実が出てくる。

この記事ではチャンネルMnet社の放送確認書のケースを取り上げよう。

わたしが、アスカから入手した博報堂とのメール通信の記録によると、2014年3月にチャンネルMnetが放送したはずのCMの放送確認書が、5月下旬になってもアスカに届いていなかったので、アスカの担当者が博報堂に対して原因を問い合わせた。

これに対して5月28日の17:01分に、博報堂のSHIZUKA IWAKAWAという社員から、メールで次のような回答があった。

→Mnet放送確認書に関しましては、只今局に取り寄せ中となります。
ご迷惑をお掛け致しまして申し訳ございません。

そして博報堂からアスカに対して実際に送付されたのが次の「放送確認書」である。

■同資料のPDF

放送確認書の番組開始時刻と番組終了時刻を見る限り、確かに3月にCMが複数回放送されたことになっている。ところが放送確認書の発行日は、5月29日になっている。通常は翌月の初旬に発行される。10桁CMコードも入っていない。

さらにおかしなことに、放送確認書に表示された放送局・チャンネルMnetの住所が間違っているのだ。上記の放送確認書では住所は、「東京都港区2-7-4」になっているが、港区の後に「西新橋」の地名が抜けているのだ。

チャンネルMnet社ではなく、博報堂が住所を入力したから、「西新橋」を忘れた可能性はないだろうか。

つまりこの放送確認書は、チャネルMnetが作成した書類ではない疑いも若干あるのだ。わたしの手元にチャンネルMnetの放送確認書が5枚あるが、いずれも「西新橋」の地名が欠落している。

このような事実が明らかになった以上、CM「間引き」の有無だけではなく、放送確認書そのものの信憑性についても、検証する必要が生まれてきたのだ。【続】