1. 博報堂事件、BPO(放送倫理・番組向上機構)に申し入れの総括、「番組休止→料金請求」3ケースと、ビデオリサーチ視聴率のかさ上げの事実

大手広告代理店に関連する記事

2016年07月12日 (火曜日)

博報堂事件、BPO(放送倫理・番組向上機構)に申し入れの総括、「番組休止→料金請求」3ケースと、ビデオリサーチ視聴率のかさ上げの事実

BPO(放送倫理・番組向上機構)という団体をご存じだろうか。この団体は端的に言えば、「放送への苦情や放送倫理の問題に対応する、第三者の機関」(ウェブサイト)である。

視聴者から番組などに関する申し立てを受けて、BPOが重要と判断した問題に関して、意見を表明してきた。

このBPOに対して、筆者は先週、次の4件の申し立てを行った。

朝日放送が「噂のお買い得セレクション」(2011年3月15日、27:42~29:12の放送予定)を休止したにもかかわらず、クライアント(通販のアスカコーポレーション)に対して、CMを仲介した博報堂から料金が請求されていた問題。

■裏付け資料

テレビ北海道が「テレショップ」(2011年3月15日と22日、27:00~27:30の放送予定)を休止したにもかかわらず、クライアントに対して、CMを仲介した博報堂から、料金が請求されていた問題。

■裏付け資料

テレビ愛知が「サーズデープレゼント」(2011年3月17日の10:30~11:00の報道予定)を休止したにもかかわらず、クライアントに対して、CMを仲介した博報堂から、料金が請求されていた問題。

■裏付け資料

博報堂がクライアントに提示した番組提案書の中に記された視聴率のデータが偽装(ビデオリサーチのデータ)されていた問題。

■視聴率偽装一覧(エクセル)

  注:但し、上記資料の14ページのデータは、出典となっている番組提案書に記された数値が何を指しているのか曖昧なので、参考の数値とする。紛らわしい数値の提示により、クライアントに数値の意味を誤解させ、意図的に高い視聴率のような印象づけをさせようとする意図が感じられる。

◇岩手では、入場者の水増し「カウント

朝日放送、テレビ北海道、テレビ愛知の「番組休止→料金の請求」事件が起きたのは、東日本大震災の時期である。混乱の中でのミスという可能性もあるが、たとえそうであっても、筆者が調べた限りでは、その後、番組休止に対する賠償は行われていない可能性もある。博報堂は事情を説明すべきではないか。

さらに博報堂の他の業務を検証したところ、仕事が極めて杜撰(ずさん)であることが分かった。参考までに、公になっている報道を紹介しておこう。

■写真で見る博報堂によるデータの流用(パクリ)① メディア黒書が内部資料を入手(メディア黒書)

■博報堂による「過去データ」の流用問題検証(続編)、画像が示す「流用」の事実(メディア黒書)

■博報堂によるタレント料の請求、08年の平均約41万円から11年は約71万円へ急騰、「博報堂VSアスカ」の裁判(メディア黒書)

■岩手県施設、指定管理者が入館者数を水増し バイト使い(朝日新聞)

■津波記録誌で「怠慢」編集 岩手県大槌町、東北博報堂との契約解除(産経新聞)

◇博報堂の配慮する中部放送

さて、筆者がBPOに上記の事件を申し立てたのは、倫理上の問題が見受けられるからだ。まだ取材の段階であるが、休止された番組は、料金が請求されただけではなく、他社へ転売されている可能性もある。

これに関して、テレビ北海道は、取材を拒否しているが、本来はみずから説明しなければならない公益性の高い問題だ。

また、やはり「休止→料金請求」の疑惑がある中部放送は、「博報堂さんの許可」なく真実を教えることはできないとしている。テレビ局が広告代理店の顔色をうかがっている。このあたりに広告代理店が日本のメディアを支配している実像がかいま見えるようだ。

広告代理店なしに経営できないのが日本のテレビ局である。

◇過去の日テレの視聴率問題で声明

幸いにBPOには、「放送倫理検証委員会」という部門があり、著名な人々が委員を務めている。

■放送倫理検証委員会のメンバー一覧

また、BPOは2003年12月には、日本テレビで起きた視聴率偽造事件に関して次のような声明を発表している。

日本テレビで起きた視聴率操作事件は、放送の自律と放送文化の質の向上を目指す「放送倫理・番組向上機構」[BPO]にとっても、重大な問題を提起した。テレビ局のプロデューサーが担当番組の視聴率を上げるために、制作費を使って視聴率調査対象者に金品を贈るようなことは、放送・広告関係者だけでなく、視聴者や社会を欺く背信行為と言わなければならない。(全文)

博報堂を舞台としたこの経済事件は、取材すればするほど、不可解な点が浮上してくる。それは逆説的に考えると、これまでジャーナリズムの光が当たらなかったことに原因があるのかも知れない。新聞社の足下にある新聞販売問題と同じ性質を有している。

ビジネスモデルが間違っているのである。