1. 横浜副流煙裁判、原告宅と被告宅の位置関係を現地調査ぜすに診断書を書いた作田学医師

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2020年01月30日 (木曜日)

横浜副流煙裁判、原告宅と被告宅の位置関係を現地調査ぜすに診断書を書いた作田学医師

メディア黒書に日本禁煙学会の作田学氏に関する情報提供があった。「盛岡地裁の受動喫煙訴訟不当判決に抗議する」と題する作田学氏が執筆した抗議文がネット上に掲載されているというのだ。文書の日付は、「平成24年10月10日」。肩書は、「NPO法人 日本禁煙学会 理事長 」となっている。

盛岡地裁が審理した受動喫煙裁判の概要は、岩手県の職員が「公用車(注:の内部で)の受動喫煙による化学物質過敏症を発症させられた」として賠償を求めたものである。盛岡地裁は原告の訴えを棄却した。

作田氏による抗議文の内容は次の通りである。

■抗議文
公用車での受動喫煙により化学物質過敏症を発症した県職員が岩手県に損害賠償を請求した事案に対して、盛岡地方裁判所は10月5日に県職員の訴えを棄却し、岩手県の責任をまったく認めない不当判決を下した。
 日本禁煙学会は本判決に対して強く抗議する。その理由は以下の通りである。

 原告が公用車の受動喫煙による化学物質過敏症を発症させられたのは2008年1月である。その5年前に職場の受動喫煙防止を努力義務とした健康増進法第25条が施行された。その後厚生労働省通知等で再三職場の受動喫煙防止措置の推進がなされていた。しかしながら、岩手県は、地方自治体として民間職場に先んじて、職場の受動喫煙解消を進める立場にありながら、地方公務員の職場である公用車を一切禁煙にしていなかった。

 受動喫煙の健康影響には、長期間曝露の結果肺ガン等の致死的な疾患を発症する慢性影響と、曝露後ただちに人命にかかわる気管支あるいは急性心筋梗塞等の発作を誘発する恐れのある急性影響とがある。急性影響の中には直ちに死には至らないが、極めて重篤な体調不良を惹起してその後の社会生活に大きな困難をもたらす化学物質過敏症がもたらされることはすでに2005年に受動喫煙症診断基準に明示公表されていた。

 判決は、原告の受傷当時、他の自治体と比較して岩手県の受動喫煙対策がとりわけ遅れていたわけでない、しかも、受動喫煙で化学物質過敏症が惹起されるという認識は一般的ではなかった、と言う誤った認識に基づいて、岩手県に法的責任はないと断じた。

 しかしながら、法律に従って万全の受動喫煙対策を行っていなかったのだから、それによって引き起こされたすべての疾患と体調不良に岩手県当局は責任を負うべきである。
 受動喫煙によって化学物質過敏症が起きるとは認識していなかった、という理由でその責任が免罪されるという論理は、市民常識と相いれない。

 職場の受動喫煙で化学物質過敏症を発症させられた原告の受けた肉体的、精神的、社会的損害は実に甚大である。受動喫煙症、化学物質過敏症に対する誤った認識に基づいた今回の盛岡地裁判決に対して、本学会は強く抗議する。
以上

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この裁判をわたしは取材していないので、判決についての評価はできないが、少なくともこの文章を読む限りでは、岩手県側に非があるような印象を受ける。わたし自身が禁煙者で分煙に賛成だから、ある意味では当然の抗議文だと受け止めることができる。

だが、1か所だけ首をかしげざるを得ない部分がある。裁判所が原告を敗訴させたことを受けて綴られた次の記述である。特に赤字の部分に注意してほしい。

しかしながら、法律に従って万全の受動喫煙対策を行っていなかったのだから、それによって引き起こされたすべての疾患と体調不良に岩手県当局は責任を負うべきである。
受動喫煙によって化学物質過敏症が起きるとは認識していなかった、という理由でその責任が免罪されるという論理は、市民常識と相いれない。

「それ(注:受動喫煙)によって引き起こされたすべての疾患と体調不良」と作田氏は述べているが、体の不調の原因が受動喫煙にあるとしている根拠がよく分からない。おそらく診断書にそんなふうに記述されているから、それを根拠に体の不調は受動喫煙という論理構成なのだと思うが、作田氏自身が横浜副流煙裁判で医師法20条違反の認定を受けた情況の下では、数年前に執筆したこの抗議文が説得力のないものに陥落してしまうのである。時間軸をさかのぼって、診断書そのものが怪しいという評価になる。

県職員の診断書を作田氏が作成したかどうかは別にして、作田氏が理事長を務める日本禁煙学会が裁判に関与していた事実が、過去の文書の評価を変えるのである。

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市民(住民)運動では、ウソが発覚するとたちまち信用度が失墜する。ほんの些細なことでも、どこかにウソが見え隠れすると、住民は運動体を支持しなくなる傾向がある。

横浜副流煙裁判には、作田医師のほかにも著名な宮田幹夫医師も関与している。宮田幹夫医師は、電磁波による公害を解決するための市民運動でも、重鎮のような地位を占めてきたひとである。しかし、医師法20条違反の認定を受けた作田医師と協働していた事実が知れ渡ると、これまでの信頼も消えてしまうのである。著書等に事実の誇張はないかを再検証する必要が生じる。

作田医師は、横浜副流煙裁判の原告の病気を受動喫煙症や化学物質過敏症と診断したが、驚くべきことに、現地調査を一度も実行していない。現場に足を運び、建物の位置関係を確認すれば、通常では被告宅の煙が原告宅まで届かないことが分かる。その最も大事な作業を怠り、原告の希望する病名を診断書に記して、原告の体調不良の原因は被告宅から発生する副流煙にあると発言し続けてきたのである。極論は、マイナス効果しか生まない。事実を客観的に捉えるべきだろう。

副流煙と病気の関係を医学的に立証すべきだとまでは言わない。それは不可能に近い。だが、まずは被告の副流煙が、原告宅まで届いているかを現地調査で確認すべきだったのではないか。

ちなみにわたしは、横浜副流煙事件を最初に取材した際、被告の藤井さん宅まで足を運んだ。自宅から1時間半から2時間を要するので、藤井さんから中間点あたりで待ち合わせて、面談する提案があったが、遠方から藤井さん宅まで行った。現地で確認したいことが2点あったからだ。

まず、被告宅と原告宅の位置関係である。それから原告宅近辺に高圧電線や携帯電話基地局など、強度の電磁波発生源になるものがないかを調べる必要があった。電磁波による被曝は、化学物質過敏症と類似した症状を呈する。だから原告宅近くに電磁波の発生源があれば、原告が主張する病気-化学物質過敏症という前提そのものが成り立たなくなる可能性があるからだ。客観的な事実を把握するためには、現場へいく以外に方法がない。

作田氏はそれを怠って、憶測で診断書を作成したのである。