1. 博報堂が請け負った「大震災の記録誌」、1250万円の受注に「ぼったくり」の声も

大手広告代理店に関連する記事

2016年04月04日 (月曜日)

博報堂が請け負った「大震災の記録誌」、1250万円の受注に「ぼったくり」の声も

ジャーリズムのメスが入らない領域のひとつに広告代理店がある。新聞社の「押し紙」問題も、新聞社に対する遠慮から、なかなか取材対象にならないが、広告代理店はその比ではないかも知れない。

広告に依存しているメディアにとって広告代理店は、自社の実質的な営業部門としての性格を有しているからだ。ただ、圧倒的に規模が大きい電通を除けば、まっく報道の対象になっていないわけではない。

たとえば産経新聞は、昨年の12月に、「津波記録誌で「怠慢」編集 岩手県大槌町、東北博報堂との契約解除」と題する記事を掲載している。

東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県大槌町は8日、大震災の記録誌編集事業について、契約上の履行期間内の業務完了が事実上不可能として、事業を請け負った東北博報堂(仙台市青葉区)との契約を解除したことを明らかにした。

 町は2月、3社による競争提案審査を実施し、事業の全体管理者として東北博報堂を選定。約250ページの記録誌1千部と、全戸配布する約25ページのダイジェスト版8千部の作成を1250万円で委託した。

 納期の7月に内容を確認したところ、被害状況などのデータの羅列にとどまり、震災の悲惨さを伝える記録誌としての完成度は低く、いったん期限を11月末に延長。9月には一部の文章で、県が発行した別の記録誌からの無断コピーも発覚した。

 作成過程で、町とやりとりするのは印刷会社の担当者で、取材先の選定や交渉、誌面構成などは町に依存しており、実質的に印刷会社への丸投げだったという。町は東北博報堂盛岡支社長らに厳重注意したが、編集作業の体制改善はみられなかったという。10月に納期を来年2月にする再延長の申し出があったことから、期間内の完成は事実上不可能と判断し、契約解除に踏み切った。

 平野公三町長は「実績のある会社だったので信頼していた。裏切られたという気持ちがある」と話している。東北博報堂は「町のいう通り、当社の怠慢ということになる。今後、このようなことが二度と起きないように努める」とした。

◇高く見積もっても500万円

文中にある「約250ページの記録誌1千部と、全戸配布する約25ページのダイジェスト版8千部の作成を1250万円で委託した」という部分に注目してほしい。読者は、この受注額についてどう思うだろうか。

わたしの体験からすれば、とんでもない額である。どんなに高く見積もっても500万円ぐらいだ。まず、250ページの書籍を1000部制作するのであれば、大手の自費出版専門会社でも、250万円から300万円ぐらいの価格である。

この金額には、ライターの代筆代金、編集代金、印刷料金が含まれている。

一方、約25ページのダイジェスト版8千部。これについても、わたしは100万円で十分だと思う。

8千部という部数が見積もりを引き上げていると考えている読者もいるかも知れないが、印刷で最も費用がかかるのは、版下の製作である。わたしと交流のある印刷会社では、25万円から30万円ぐらいで版下を製作する。

印刷する用紙代は極めて安い。

こんなふうに考えると、1250万円の受注は異常と考える人が多いのではないか。しかも、仕事を受注しておきながら、「県が発行した別の記録誌からの無断コピーも発覚」するなど、「怠慢編集」との評価を受けたのだから、社員のモラルに問題がある。

■広告代理店に関する情報提供は、048-464-1413(メディア黒書)まで。