1. 内閣府の裏金づくり疑惑の根拠、広告代理店が演じてきた負の役割

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2018年08月03日 (金曜日)

内閣府の裏金づくり疑惑の根拠、広告代理店が演じてきた負の役割

内閣府を含む中央省庁が裏金づくりをしてきた疑惑が浮上している。この問題はメディア黒書で繰り返し報じてきたが、その根拠を再整理しておこう。例として引くのは内閣府のケースである。

内閣府は、政府広報(新聞広告、CM等)の仕事を電通・博報堂をはじめとする広告代理店に発注している。当然、仕事に対する報酬が国家予算から支払われる。支払いに際して、広告代理店は、内閣府に対して請求書を送付する。

ところがその請求書が「手作り」(おそらくエクセルかワードで作成)のものが大量に存在するのだ。なぜ、「手作り」の請求書が異常なのか?この点について、説明しよう。

現在、大半の企業はコンピューターと連動した会計システムを導入している。おそらく上場企業の場合は、100%がこのシステムを使って会計処理をしている。

従って請求書は、「手作り」ではなく、コンピューターがプリントアウトしたものでなければおかしい。プリントアウトされたものには、当然、インボイスナンバー(請求書の番号)が付番されている。逆説的にいえば、インボイスナンバーが付番されていれば、その請求書は、コンピューターがプリントアウトしたものである。コンピューターと連動した会計処理が行われている証だ。

クレジットカードやキャッシュカードが番号を付番することで、コンピューター管理されているのと同じ原理である。

ところが内閣府が広告代理店から受け取る請求書の大半は、インボイスナンバーが外してあるのだ。当然、会社のロゴも入っていない。「手作り」の請求書なのだ。それが大量に存在する。

2012年から2015年の4年間について検証したところ、博報堂分だけでも約64億円にもなる。

2016年度の場合は、筆者に見落としがなければ、広告代理店から内閣府宛ての全請求書が「手作り」のものである。つまりコンピューターと連動した正規の会計システムとは、別のところで会計処理されている疑惑があるのだ。

筆者は、2017年4月27日に、この点について博報堂の広報部へ問い合わせた。すると次のような回答があった。

すべての請求業務に社内では請求ナンバーを付与しており、売掛金の不明入金や債権トラブル等は発生していません。

つまり「手作り」の請求書を発行したことを認めた上で、経理処理する際には、社内でインボイスナンバーを付番して、通常の経理処理をしているというのだ。社外向けの「手作り」請求書と、社内向けのインボイスナンバーが付番された請求書の2種類が存在することを博報堂は認めたのだ。(これ自体、私文書偽造に該当するのでは?)

が、2種類の請求書を作成する合理的な理由はない。最初から、公式の請求書を送付する方が、付番作業がはぶけて効率的であるからだ。この謎は、解明されなければならない。

ここで筆者が思い出したのは、1986年の毎日新聞・不正経理事件である。これは毎日新聞社が販売店に対して支給する補助金の一部を、銀行の裏口座にプールしていた事件である。新聞の場合、新聞1部につき○○円の補助金が支給されるのだが、このケースでは1部に付き20円をカットして、裏金にしていた。

博報堂は、社内で請求書にインボイスナンバーを付番して、コンピューター処理すると回答しているわけだが、既に述べたように、最初から公式の請求書を発行した方が手間が省けるはずだ。それにもかかわららず、こうしたプロセスを採用すれば、当然、裏金づくりの疑惑が浮上する。

筆者は、「手作り」請求書とは別に、正規の請求書も内閣府に届いているのではないかと疑っている。「手作り」請求書は、国家予算を引き出すための書面である。しかし、「手作り」請求書の額の全額が広告代理店に振り込まれているとは限らない。一部が、裏口座にプールされている疑惑がある。

もちろん、これは推論である。国家予算の使途に関しては、裁判を起こして実態を解明することが認められていないので大胆な推論を展開した。

繰り返しになるが、あえて昭和時代の八百屋さんふうの「手作り」請求書を発行する合理的な理由はなにもない。あるとすれば、裏金づくりだろう。

「手作り」 請求書は、内閣府だけではなく、文部科学省や防衛省でも存在が確認されている。全容の解明が必要だ。

◇高額請求と明細書の不存在

さらに次のことも付け加えておく必要がある。広告代理店からの請求書の中には、明細がないものがある。たとえば2日付けのメディア黒書で紹介した「平成28年熊本地震被害地向け広報業務」の請求書(電通分)は、その典型例である。実態がないから、明細もないと考えるのが普通だ。

しかも、請求額が約9100万円と異常に高い。筆者は、数名の事業者に9100万円という価格をどう見るかを尋ねてみた。すると500万円から1000万円ぐらいではないかという答えが返ってきた。価格が異常に高く、しかも明細がなく、その上にインボイスナンバーが外してあれば、一応、裏金づくりを疑う必要があるだろう。