1. 水面下で繰り返される博報堂社員の不祥事、業務上横領から入場者数の水増しまで、中央省庁に対してはインボイスナンバー欠落の請求書を多量に発行

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2018年06月19日 (火曜日)

水面下で繰り返される博報堂社員の不祥事、業務上横領から入場者数の水増しまで、中央省庁に対してはインボイスナンバー欠落の請求書を多量に発行

博報堂の元社員が、業務上横領で逮捕された。時事通信は次のように事件を報じている。短いものなので、全文を引用しておこう。

映画やアニメなどを収録する放送用テープ約7800本(仕入れ価格約1900万円)を着服したとして、警視庁赤坂署は14日までに、業務上横領容疑で、広告大手博報堂の関連会社「博報堂DYミュージック&ピクチャーズ」(東京都港区)の元社員小林宏至容疑者(37)=栃木県栃木市平柳町=を逮捕した。容疑を認め、「中古業者に転売した。高級ブランド服の購入や海外旅行などに使った」と供述しているという。

同署によると、2011年11月から昨年3月にかけ、約1億1400万円分のテープを転売したとみられ、詳しく調べている。

 逮捕容疑は13年1~12月、社内で保管していた放送用テープ約7800本を着服した疑い。■出典

博報堂に関しては、筆者は2016年から17年にかけて詳しく取材したことがある。取材の前半は、民間企業と博報堂の広告取引について、後半は中央省庁(内閣府)との広告取引について取材した。博報堂のイメージは良好なようだが、内部を取材してみるとかなりずさんは業務の実態が明らかになった。

◇民間企業での不祥事①

たとえば2016年、3月16日にNHKのローカル局が次のニュースを報じている。

盛岡市にある県の複合施設「アイーナ」で、運営を委託された指定管理者が 入館者数を水増しして県に報告していたことがわかりました。岩手県は、不適切な行為だとして改善勧告を出すとともに、管理料を減額する措置を決めました■出典

手口は簡単で、アルバイトを雇い、入館者数をカウントしている出入り口
を行ったり来たりさせていたのだ。子どもじみた手口である。

クリエーターとしての職能不足が招いた不祥事もある。メディア黒書のバックナンバー(2016年7月20日付け)から、引用しておこう。ある意味では滑稽でブラックユーモアな事件である。記事のタイトルは、「博報堂が制作した不可解な新聞広告、前代未聞『世界初』のレイアウト」

◇民間企業での不祥事②

新聞のテレビ欄にレイアウトされた奇妙な広告。もともとは横長の長方形の広告なのに、それが新聞紙面上で縦にレイアウトされているので、読者は顔を横に寝かせるか、新聞紙面を反転させなければ、広告のキャチフレーズが読みにくい。写真で紹介されている商品も横転しているよう見える。

この爆笑を誘う前代未聞の広告が掲載されたのは2012年11月15日付け西日本新聞である。広告のクライアントであるアスカコーポレーションが言う。

「確かに弊社が西日本新聞に広告を掲載するように博報堂に依頼しましたが、その後、このような広告が掲載されていたことには気づきませんでした。通常、広告を出したときは、掲載紙が送られてくるのですが、その記憶もありません。こんな広告を掲載すると、読者は『この会社はバカか』と思うでしょう」

広告を制作したのは、博報堂である。次のPDFが問題の広告である。左下の細長い広告、「世界初」の箇所に注意してほしい。

■問題広告の出典

◇「見積書」も後付の前代未聞

博報堂がアスカに送付した「見積書」によると、この広告の価格は75万6000円。

■出典の見積書

奇妙なことに、広告の掲載日は11月15日であるが、「見積書」が発行された日付けは、それより後の11月30日である。本来、見積書は広告掲載日よりも前に提示して、クライアントの許可を得なければならないが、後付けの「見積書」になっているのだ。これについては、現在、原因を取材しているので、今後、詳細を報告する機会があるかも知れない。

◇西日本新聞の見解

念のために西日本新聞の「お客様センター」と広告担当者に事情を尋ねてみた。お客様センターの電話に対応した女性は、次のように話している。

新聞社:「今日はじめてこんなのを見ました(笑)」

筆者:「博報堂がやった広告なんですけど」

新聞社:「ああ、そうなんですね」

筆者:「これだけなんでしょうか。他にも同じようなものがありますか」

新聞社:「いえ、わたしも今日はじめてみました」

一方、広告担当者は次のように話す。

新聞社:「テレビ欄のページはレイアウトが決まっています」

筆者:「そうすると本来はタテの広告を制作する必要があったということですね」

新聞社:「横だと読みにくいので、基本はタテですね。」

◇職能の問題

この奇妙な広告が制作された時期、博報堂はアスカに40名近い人員を送り込んでいた。しかし、調査により現在までに確認できた当時の正社員は、現地採用も含めるとたった2名だけで、名刺は博報堂のものを使っていたものの、クリエータとしての職能が不十分な非正社員が多数混じっていた可能性が高い。

その結果、前例のない奇妙な広告を掲載する事態になったと思われる。

◇民間企業での不祥事③

その他の参考記事も紹介しておこう。

 

【産経】津波記録誌で「怠慢」編集 岩手県大槌町、東北博報堂との契約解除

【毎日】入館者数水増し 県の施設で管理委託グループが4年間で2380人分 /岩手

【メディア黒書】写真で見る博報堂によるデータの流用(パクリ)① メディア黒書が内部資料を入手

◇中央省庁との疑惑

博報堂と中央省庁の取り引きで最も重大な疑惑は、博報堂が中央省庁に対して発行してきた請求書にインボイスナンバーが欠落しているものが多量にある事実である。

インボイスナンバーとは、請求書番号のことである。現在のコンピューターシステムと連動した会計システムの下では、インボイスナンバーを付番することによって、お金の流れを管理しているのである。それはクレジットカードがナンバーによって、コンピューターシステムと連動するのと同じ原理である。

現在では、大企業はいうまでもなく、ほとんど全ての企業が、コンピューターシステムと連動した会計を実施している。例外があるとすれば、八百屋さんやフリーライターなど極めて弱小な個人業者が発行する請求書だ。それをコンピューターシステムと連動した会計システムに組み込む作業は、手間がかかることは言うまでもない。

ところが博報堂が中央省庁に対して発行してきた請求書の中には、昔の八百屋さんタイプの請求書が多量にあるのだ。これは実に不思議なことだ。

その額は、2015年度の新聞広告(政府広報)だけで20億円を超えている。インボイスナンバーが欠落しているわけだから、正規の会計監査・システム監査を受けていない可能性がある。となれば、裏金になっている疑惑があるのだ。

博報堂と中央省庁の間の取引で発行された請求書のうち、インボイスナンバーが外してある請求書の額面総計を紹介しておこう。次のようになる。

内閣府:約64億円(2012年度~2015年度)

防衛省:(陸上自衛隊):約9億円(2008年~2015年度)

文部科学省:約9000万円(2015年度)

復興庁:約2000万円(2015年度)

農林水産省:約300万円(2015年度)

環境省:約1000万円(2015年度)