1. 内閣府から疑惑のプロジェクトで電通へ25億7200万円

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2017年09月06日 (水曜日)

内閣府から疑惑のプロジェクトで電通へ25億7200万円

読者は、メディア黒書でたびたび取りあげてきた内閣府と広告代理店が連携したプロジェクト-「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広告テーマの実施」-を記憶されているだろか? プロジェクト名が長いので、ここでは「ブランドコンセプトP」と略称しておこう。

このプロジェクトは、国策(たとえば、北朝鮮に対する警戒の喚起)をPRするためのもので、新聞広告、テレビCMなど種々の内容で構成されている。内閣府が広告代理店と提携してPR活動を展開するのは、珍しいことではないが、ブランドコンセプトPには、ある著しい特徴がある。

それは内閣府の裁量だけで各種のPR事業を発注できる点である。国家予算を使うにもかかわらず国会の事前承認が不要なのだ。通常のPR活動では、年間の予算に基づいて、発注量を決めるが、ブランドコンセプトPでは、社会状況などを見極めながら、臨機応変に内閣府の裁量で発注量を決める。従って、見積書は存在しない。

内閣府の職員が、口答やメモで、PRのタイプや内容、それに価格などを交渉し、即座に発注することになる。広告代理店にとっては、笑いが止まらないプロジェクトである。

2016年度にブランドコンセプトPを請け負ったのは電通で、25億7200万円が内閣府から電通へ流れ込んでいたことが、行政事業レビューシートの検証結果から分かった。

裏付け1

裏付け2

裏付け3

裏付け4

◇会計監査を受けているのか?

ブランドコンセプトPが始まったのは、2012年度である。野田内閣の時代である。安倍内閣になった次の年度から、規模が急激にふくらんだ。2012年度のスタートから2015年度までは、博報堂がブランドコンセプトPを請け負い、約64億円の収入を得ている。

ブランドコンセプトPに関する疑惑は多岐にわたるが、博報堂のケースでは、同社が発行した請求書にインボイスナンバーが付番されていないことが最も大きな疑惑である。請求書は、PCで処理されるわけだから、インボイスナンバーが付番されていなければ、原則として正規の会計システムに組み込むことが出来ない。従って、これらの請求書から得られた収入が、会計監査を逃れている疑惑があるのだ。ここから収入の未申告や裏金などの疑惑が浮上するのは言うまでもない。

筆者は、2016年度のブランドコンセプトPも2015年度までと同じ方法で会計処理が行われているのではないかを疑い、内閣府に対して2016年度のPRに関連した契約書や請求書をすべて開示するように情報公開を申し立てている。そのうちの1部分は、開示されたが、その中にブランドコンセプトPに関する資料は一切含まれていなかった。そこで行政事業レビューシートで調べ、内閣府が支払った金額を確定したのである。

残りの資料については、2018年の5月末までを開示期限にするとの連絡を受けている。当然、そこには2016年度のブランドコンセプトPに関する資料が含まれていなくてはおかしい。

通常、情報公開にこれだけの長時間は要しない。この事実自体が不自然だ。電通が、博報堂と同じ経理処理(インボイスナンバーを外す行為)をしているかどうかは、来年判明する。

ブランドコンセプトPについては、『週刊金曜日』(2017年2月24日号)に筆者が詳しく書いている。また、次の記事に詳しい。

【参考記事】内閣府から請け負った博報堂の業務、契約書の仕様と乖離した業務内容で高額請求