1. 北のミサイル攻撃を想定、国民に避難を呼びかける政府広告・テレビCMが登場、国家予算は3億6000万円、安倍内閣による露骨な世論誘導とメディアコントロール

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2017年06月27日 (火曜日)

北のミサイル攻撃を想定、国民に避難を呼びかける政府広告・テレビCMが登場、国家予算は3億6000万円、安倍内閣による露骨な世論誘導とメディアコントロール

6月23日付け朝刊に、北朝鮮のミサイル攻撃に対処するための指示を示した政府広報(内閣府)が掲載された。北朝鮮の経済力・軍事力と、日米同盟の経済力・軍事力の圧倒的な差を知る人は、「戦争ごっこ」じみた安倍内閣の国策に苦笑したのではないかと思うが、この政府広報の裏には、関係者のさまざまな思惑があるようだ。

まず、センセーショナルなキャッチコピーを紹介しよう。

「Jアラートで緊急情報が流れたら、慌てずに行動を。」

「できる限り丈夫な建物や地下に避難する。」

「物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る。」

「窓から離れるか、窓のない部屋に移動する。」

同じ23日には、全国の民放43局で「弾道ミサイル落下時の行動」の政府広報CMも始まった。そのほかに、内閣府は、「武力攻撃やテロなどから身を守るために」と題するパンフレットも制作した。

これらの費用を、日刊ゲンダイが内閣府に問い合わせたところ、

「CM制作費と放映費で1億4000万円、新聞広告で1億4000万円、ウェブ広告で8000万円です」

と、応えたという。総計で3億6000万円である。

かりに安倍内閣が本当に北朝鮮のミサイルを警戒しているのであれば、彼らが最初に標的にする原発を停止することが先だろう。

◇世論誘導・メディアコントロール・軍事大国化

この政府広告が制作された背景には、次のような事情があるようだ。

①安倍内閣が、テロ防止を口実に共謀罪法案を強行採決し、強い批判が起こったために、テロを警戒する世論を形成する必要が生じた。そのためにメディアを利用した。

②共謀罪や加計学園、それに森友学園の問題で、メディアが反安倍内閣の立場を鮮明にしてきたので、広告やCMなどのかたちでメディア企業に利益を与え、言論を金でコントロールする必要に迫られた。

③北朝鮮による脅威を煽ることで、日本の軍事大国化を加速させ、それにより軍事産業に莫大な利益をもたらす意図がある。

◇各メディアへ支払われた国家予算は?

メディア黒書で指摘してきたように、内閣府による広報戦略には、極めて不透明な部分がある。2012年から始まった「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務」というプロジェクトの中では、政府広報の不透明な出稿制度が構築されている。今回の政府広告・CMも、このプロジェクトの中で出稿が行われたという証拠はないが、その可能性が極めて強い。(筆者は、今後、調査する方針だ。)

驚くべきことに、このプロジェクトの中で出稿される政府広告・CM等については、内閣府は事前に広告代理店から広告制作費や掲載料の見積を取る必要がない。内閣府の裁量で自由に出稿できることになっているのだ。内閣府の裁量で出稿量が決まるわけだから、この制度自体が言論をコントロールする道具として機能していることになる。

しかも、メディア媒体ごとの掲載料を国民は知ることができない。その具体例を示そう。次に示すのは、2015年度のプロジェクトを担当した博報堂が内閣府に送付した請求書である。

■黒塗りの請求書

真っ黒に塗り潰されている。このような方法で、2012年度から2015年度の4年間で、約64億円の国家予算が博報堂へ支払われている。そこからメディア企業へ広報費が流れているが、詳細は分からない。朝日新聞、東京新聞は少ない可能性もある。

さらに次のことも明記しておく必要がある。

◇インボイスナンバーを外した請求書

前出の約64億円分の請求書からは、インボイスナンバーが外してある事実である。

インボイスナンバーは、書面の整理番号である。日本国民をマイナンバーでコンピューター管理するように、請求書はインボイスナンバーでコンピューター管理される。そして通常は、見積書や納品書のナンバーとひも付きになっている。

コンピューターと連動した会計システムを導入している企業(ほとんど全企業)は、インボイスナンバーを付番することで、コンピュータにより合理的に経理作業を進める。会計監査とシステム監査も合理的におこなう。

したがって、あえて正常な商取引でインボイスナンバーを外す合理的な理由は存在しない。

博報堂は、社内では付番していると説明しているが、なぜ、社内では付番して、社外向けには、ナンバーを外した別の請求書を送付しているのか疑問が残る。もちろんインボイスナンバーがない請求書の発行が違法行為ではないが、
コンピュータと連動した正規の会計システムとは別に経理処理している疑惑もある。裏金作りでこのような方法がよく使われる。従って、念のために会計検査院が調査する必要があるというのが筆者の考えだ。

【写真】新聞各紙に掲載された政府広告

なお、2017年度の「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務」をどの広告代理店が落札したかの情報は、現段階では入手していない。