1. 陸上自衛隊で8年間に約9億円、インボイスナンバーのない疑惑の請求書、ワープロで作成か?

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2017年05月30日 (火曜日)

陸上自衛隊で8年間に約9億円、インボイスナンバーのない疑惑の請求書、ワープロで作成か?

博報堂が発行した請求書にインボイスナンバー(請求書の管理番号)がないものが、多数あることが発覚している。既報したように内閣府の場合、2012年から2015年までの4年間で約64億円になる。

その他、復興庁、環境省、農林水産省、文部科学省、防衛省でも、同じタイプの請求書が見つかっている。これら5つの「役所」の場合、内閣府ほどの規模ではないが、防衛省の陸上自衛隊のように、2008年から2015年の間に疑惑の請求額が約9億円にもなるケースもある。

詳細を紹介する前に、インボイスナンバーとは何かという点と、インボイスナンバーの不在はどのような疑惑を生むのかに言及してみよう。注:次節の記述は、29日付けメディア黒書からの引用である)

◇なぜインボイスナンバーを外すことが異常なのか?

インボイスナンバーとは、請求書に付番されている書類番号である。この番号は、書面の整理番号である。日本国民をマイナンバーでコンピューター管理するように、請求書はインボイスナンバーでコンピューター管理される。そして通常は、見積書や納品書のナンバーとひも付きになっている。

コンピューターと連動した会計システムを導入している企業は、インボイスナンバーを付番することで、合理的に経理作業を進める。会計監査とシステム監査も合理的におこなう。もちろん博報堂もコンピューターと連動した会計システムを導入している。

したがってあえて正常な商取引でインボイスナンバーを外す合理的な理由は存在しない。博報堂は、社内では付番していると説明しているが、なぜ、社内では付番して、社外向けには、ナンバーを外した別の請求書を送付しているのか、合理的な理由は分からない。

しかし、法的な観点から見ると、インボイスナンバーを外した請求書の発行が違法行為にあたるわけではない。エクセルやワードの請求書も合法である。請求書の書式が自社のロゴ入りの公式のものでなければならないという法律もない。この点について、取材した税理士は次のように話す。

「違法行為にはあたらないことを熟知した上で、こうした請求書を発行しているのでしょう」

法の抜け道があるというのだ。

◇陸上自衛隊は約9億円

次に示すのが、内閣府を除く、各省庁へ博報堂が請求した額である。繰り返しになるが、インボイスナンバーは入っていない。

防衛省(陸上自衛隊):898,181,314 (2008年~2015年度)
文部科学省:88,088,355(2015年度)
復興庁:19,668,335  (2015年度)
農林水産省:2,999,160(2015年度)
環境省:1,327,847,485(2015年度)

このうち防衛省(陸上自衛隊)の詳細を示そう。次のエクセルファイルである。

■インボイスナンバーがない請求書一覧(陸上自衛隊)

興味深いことに、陸上自衛隊の場合、全部で45枚の請求書があるのだが、このうち2枚だけは他社のもので、それにはインボイスナンバーが入っている。正規の請求書である。社名は、黒塗りになっているので判別できないが、代表取締役の氏名が「岡田実」となっている。

■正常な請求書(岡田実)

■博報堂の請求書

博報堂の請求書は、おそらくワープロ(ワード等)で作成された可能性が高い。

以前に防衛省に事情を問い合わせたことがあるが、「お答えできない」とのことだった。

◇徹底調査が必要

日本の中央省庁の中には、メールは受け付けないなど、前近代的な制度を維持しているところがあるのは周知の事実だが、そうすることで裏金づくりの温床を維持しているとも言えるだろう。

筆者は裏金づくりを行っていると断言しているわけではない。強い疑惑があるうえに、その金額は莫大で、しかも依然として天下りの実態があるので、国税局をはじめ経理に関連した「役所」は、徹底調査すべきだと主張しているのだ。そのための資料を筆者は多量に提供している。

国会予算の使い方に関連した疑惑なので、調査に踏み切るのは当然だと思うが、日本の「役所」は腰を上げない。

【写真】(左)極右政党の代表、(右)稲田朋美防衛大臣