1. 電通が関与したMnetの「疑惑」放送確認書の件で、総務省へ調査の依頼、博報堂でも同じ例が

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2017年05月26日 (金曜日)

電通が関与したMnetの「疑惑」放送確認書の件で、総務省へ調査の依頼、博報堂でも同じ例が

衛星放送局Mnetが電通に送付したテレビCMの放送確認書に偽造疑惑がある問題で、筆者は25日、総務省の衛星地域放送課に調査を依頼した。

以下、総務省に26日に送付予定の文書である。事件の経緯を分かりやすく説明しているので、初めてこの事件に接する読者にも参考にしてほしい。

【総務省への要望書】

総務省・衛星地域放送課
発信者:黒薮哲哉 
電話:048-464-1413
    メール:xxmwg240@ybb.ne.jp

 昨日、電通の社名がある奇妙な放送確認書について説明させていただきました黒薮哲哉です。

同封しましたのは、放送確認書の実物コピーです。CMの依頼主は(株)ライオンです。ご理解いただいていると思いますが、CM放送と放送確認書は次のような関係になっています。

広告主(この件では、ライオン)が電通にCMを発注します。電通がMnetと打ち合わせてCM放送の段取りをします。そのCMが放送されると、放送確認書が発行されます。それを見て広告主は、CMが放送されたことを確認する、という流れになります。

ところが、この放送確認書には、偽造された形跡があります。「電波を止める権限」(高市総務大臣の発言)を有しておられる貴省で調査していただければ幸いです。疑惑の箇所とその根拠は次の通りです。放送確認書上の①から④の箇所が、以下の説明に対応します。

 

「東京都港区2-7-4」となっていますが、「港区」の後に、「西新橋」が抜けています。住所が間違っているのです。電通は、訂正したものをMnetから受け取ったと説明しましたが、おなじ住所の誤記は、2014年の日付がある他の民間企業から入手しましたMnetの放送確認書でも確認できます。

この欄に放送されたCMの内容と放送日時、CMコードなどが明記されます。右上に「-」「▭」「×」が確認でますが、通常の放送確認書にはこのようなマークは表示されません。これらはWindowsのマークです。つまり画面の一部を貼り付けた疑惑があるのです。放送確認書は、偽造を避けるためにコンピューターシステムと連動して自動的に作成される仕組みになっていますが、この放送確認書には、その形跡がありません。ワードで偽造が可能です。

CMが放送された日付けとして、「5月30日」と「5月31日」が確認できます。ところが放送確認書の発行日は、5月27日になっています。CMが放送された際に自動作成されるはずの放送確認書が、放送前に作成されていることを示しています。これも偽造の証拠と判断できます。

 以上、調査を依頼します。

◇電通広報部との質問と回答

話は前後するが、電通広報部とのやりとりも紹介しておこう。筆者は、電通に次の質問をした。25日付けの質問である。

【質問】
あまりにも不可解な点が多いので、念のために次の点についてお尋ねします。

放送局の住所が間違っているわけですが、これについてMnet(CJ E&M Japan株式会社)へ指摘されなかったのでしょうか。Mnetから博報堂へ宛てた放送確認書でも同じ住所のミスがあります。その書面は古いものでは、2014年5月になっています。

つまり少なくとも3年も同じミスがある放送確認書を受け取っていたと解釈してもよろしいでしょうか。筆者:これについては後述する】

放送確認書に10桁の放送確認コードが表示されていませんが、何を根拠に「すべて正しく放送されていたことを確認しております」と返答されたのでしょうか。

放送確認書になぜWindowsの画面が表示されているのでしょうか。

(株)ライオンは放送確認書に明記されているCM内容(素材)が同社のものではないと言っていますが、放送内容も確認されたのでしょうか。

これに対して電通は次のように回答した。

【電通の回答】

住所に関しましては、放送確認書を確認した段階で指摘し、正しい住所が入ったものを受け取っております。また、個別取引に関わることについて詳細をお答えする必要はないと存じますが、放送内容につきましては、放送確認書どおりに放送されていたことを確認済みです。

以上、回答申し上げます。
     
     株式会社電通
     コーポレートコミュニケーション局国内広報部

そこで筆者は、再び次のように質問した。26日付けである。

【質問】
ご回答ありがとうございます。

ところで「住所に関しましては、放送確認書を確認した段階で指摘し、正しい住所が入ったものを受け取っております」と回答いただきましたが、その後、貴社は訂正したものを(株)ライオンへ送付されたのでしょうか。ライオンの広報部に問い合わせたところ、貴社の名前がある疑惑の放送確認書は、同社の社員のだれも見たことがないという返答を得ています。

また、「放送内容につきましては、放送確認書どおりに放送されていたことを確認済みです」と回答されましたが、問題の放送確認書には、10桁CMコードが表示されていませんので、確認はできないはずですが。また、10桁CMコードが表示されていない場合は、放送されていないと見なすのが、放送業界の常識になっています。

最近、テレビCMの間引き疑惑が複数発覚しております。広告主にとっても過信できない問題ですので、回答いただくようにお願いします。

◇Mnetと博報堂のケース

さて、本稿で紹介した放送確認書と類似したものは、実は他の民間企業が広告代理店に発注したテレビCMでも発行されている。メディア黒書で繰り返し報じてきたアスカコーポレーションのケースである。次の記事にある放送確認書の画像と、本稿で紹介した放送確認書は、まったく同じ書式だ。

住所の間違いから、Windowsの画面まで、さらに放送日と書面発行日の矛盾まですべて同じ「偽造ミス」である。

【参考記事】チャンネルMnetに質問状、放送確認書の偽造疑惑について

この書類の日付は、2014年5月である。この放送確認書以外にも、類似したMnetの放送確認書を筆者は数枚保管している。ただし、関与していた広告代理店は、電通ではなく、博報堂である。

電通の社名があるMnetの放送確認書の日付は、2016年5月で、博報堂の社名があるMnetの放送確認書の日付は、2014年5月であるから、ちょうど2年の期間である。当然、この2年間に他にも同じタイプの放送確認書が発行されていた可能性が高い。

電通の社名があるMnetの放送確認書は、ライオンによると、同社に届いていなかったということだが、博報堂の社名があるMnetの放送確認書は、アスカコーポレーションに届いていた。博報堂の社員が届けていたのだ。

ただ、アスカコーポレーションのケースでは、誰がこのような放送確認書を作成したのかという点も当然調査する必要がある。

と、いうのもコンピューターが自動作成するはずの放送確認書を博報堂が「代筆」していた事実があるからだ。放送局ではなく、博報堂が代筆していたのだ。その代筆「放送確認書」は、筆者が保管しているものだけでも22枚ある。

■22枚の放送確認書

改めて言うまでもなく、放送確認書の代筆はありえない。放送確認書は、CM間引きを防止するために、コンピューターが自動的に作成するものなのだ。ところが、博報堂の「代筆」放送確認書には、わざわざ「弊社が代筆し作成しております」と記されている。

このような事実がなければ、放送確認書はMnetが作成したと断言できるが、代筆の事実を博報堂が認めているわけだから、Mnetに関しては放送確認書の作成者を調査する必要があるのだ。もちろん、アスカコーポレーションやライオン以外の企業が被害を受けていないかも調べる必要がある。

筆者が総務省に調査を依頼したゆえんにほかならない。あるまじき行為が確認できれば、当然、電波を停止しなければならない。放送内容ではなく、ビジネス上の不正だから、それが正当な対処である。