1. 内閣府の「昭和の八百屋」レベルの手作り請求書、黒塗りになった政府広告の掲載費を全国73の新聞社に問い合わせたが・・

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2017年05月08日 (月曜日)

内閣府の「昭和の八百屋」レベルの手作り請求書、黒塗りになった政府広告の掲載費を全国73の新聞社に問い合わせたが・・

先月27日に、全国の新聞社73社に対して、筆者はある問い合わせを行った。問い合わせの内容は、内閣府が昨年、黒塗りにして開示した博報堂からの請求書(政府広告の掲載料を請求したもの)の金額明細のうち、自社に該当する部分を開示するようにお願いするものだった。

しかし、5月8日の段階でどの新聞社からも回答がない。国会予算の受取額を開示できないということらしい。

発端は、昨年の夏だった。筆者は、内閣府に対してある情報公開請求を行った。請求内容は、2015年度に広告代理店が内閣府に送付した見積書、契約書、それに請求書の3点の全部を開示するように求めたものである。

内閣府は開示に応じた。そこで開示されたものを精査したところ、内閣府が博報堂との間で交わした「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」と題するプロジェクトの契約書と請求書に次の疑問点があることが分かった。

見積書が存在しない。

契約書に契約額が6700万円と表示されているにもかかわらず、それ以外にも、内閣府がみずからの裁量で自由に広告を発注できる取り決めになっている。その請求総額は新聞広告だけで20億円を超えていた。しかも、驚くべきことに発注は、「口頭とメモ」で行われていた。
 
請求書にコンピューター・システムによる経理処理に使われるインボイス・ナンバーが付番されていない。筆者の取材に対して博報堂は社内では付番していると回答しているが、正常な取り引きでインボイス・ナンバーをあえて外す合理的な理由はなく、会計監査とシステム監査を受けていない可能性がある。かりに収入を申告していなければ、脱税ということになる。

請求書の書面がエクセルである。

請求書に日付が入っていない。

「③」から「⑤」の事実から、「手作り」の請求書と判断できる。昭和時代の「八百屋さん」の経理レベルである。信じがたいことだが、このようなものがいまだに通用しているのである。

ちなみに「手作り」の請求書は、内閣府だけではなく、農林水産省、防衛省、
文部科学省、環境省、復興庁でも使われている。常識では考えられない実態があるのだ。

次に示すPDFは、博報堂が作成した請求書の例である。1枚目の厚生労働省のものは、インボイスナンバーもロゴも入った博報堂の通常の請求書である。2枚目からが「手作り」の請求書で、農林水産省、防衛省、文部科学省、環境省、復興庁の順。いずれもインボイス・ナンバーが入っていない。書式も、おそらくはワープロである。あえてコンピューターで処理しない合理的な理由も分からない。

■博報堂の正規の請求書と「手作り」の請求書

各新聞社に博報堂から支払われた「国家予算」の額がすべて黒塗りになっている。

■黒塗りの請求書

◇黒塗り部分は特定秘密なのか?

以上の事実から内閣府をはじめとして、農林水産省、防衛省、文部科学省、環境省、復興庁でも「国家予算」の流れを調査する必要がある。いつの時期からこのような杜撰なことが行われてきたのか、あるいは年間にどの程度の不透明な金がメディアに流入しているのか、などについて調査する必要がある。

ところが内閣府はどうしても、黒塗りにした箇所(各新聞社への支払い金額)を開示しない。頑なに拒否している。かりに黒塗り部分が国が定めた特定秘密であれば、ジャーナリズムの観点からして、一層金額を突き止める必要がある。そこで筆者は新聞各社に直接、受け取った「国家予算」の額を開示するように求めたのである。

筆者は現在のシステム(新聞社と内閣府の間に広告代理店を介在させることで、見積書を発行しなくても、多額の広告費を新聞社に流し込める制度)は、廃止すべきだと思う。国家予算の支出には、見積書による事前の精査が必要だろう。

黒塗りの部分が開示されない場合は、会計検査院、東京国税局、東証などに調査を求める必要があるだろう。

◇PCIの事件

ちなみに内閣府を巻き込んだ不正経理事件としては、2008年に発覚したパシフィクコンサルタンツインターナショナル(PCI)の事件がある。これは
パシフィクコンサルタンツインターナショナル(PCI)の持株会社が設立した「廃棄化学兵器処理機構」が、2004年から中国での廃棄化学兵器処理事業を内閣府から随意契約で独占したことに端を発する。受注額は2006年までの3年で約230億円にもなった。
しかし、PCIは社長が関係する下請け会社に対して、内閣府から受注した仕事を再発注していた。発注額は3億円。そのうちの約1億2000万円に仕事の実態がないとされたものである。つまり裏金疑惑だ。
さらにPCIは同機構を通じて、人件費などを水増し請求していた疑惑も指摘された。

この事件にみるように、多額の公的資金を随意契約で手にいれ、それを「財源」にして、下請けに架空の再発注をかけて裏金を作る手口が過去にあった。国家予算は、時として不正経理の温床となるのだ。

博報堂と内閣府、それに中央省庁における「国家予算」の用途を検証しなければならないゆえんにほかならない。新聞社に対する支払いが適正な額かどうかは、黒塗りの部分が開示されるまでは不明だ。

 

写真】文部科学省が開示した書面