1. 『ZAITEN』と『ジャーナリスト』が請求書に見る博報堂の不正経理疑惑を報道

大手広告代理店に関連する記事

2017年04月03日 (月曜日)

『ZAITEN』と『ジャーナリスト』が請求書に見る博報堂の不正経理疑惑を報道

3月の後半から4月にかけて発表された博報堂と内閣府の公共事業に関する記事を2件、紹介しよう。いずれも不正経理疑惑がテーマとなっている。

◇『ZAITEN』

『ZAITEN』(財界展望、4月1日) は、「博報堂が内閣府に差し出す『有り得ない請求書』」と題するレポートを掲載している。執筆は、元博報堂の社員で作家の本間龍氏である。

このレポートでは2つの問題が指摘されている。まず、2015年度に博報堂が内閣府に請求した「構想費」6700万円の中身である。ここで意味する「構想」とは、「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」と呼ばれるPRプロジェクトの中身の構想である。具体的には、どのような戦略でどのようなPR戦略を進めるかという構想である。厳密に言えば、その他に若干の制作(30秒の動画2本とプレスリリース)が含まれているが、大半はアイディアに対する請求だ。

本間氏によれば、構想費の6700万円は、ありえない価格だという。

これだけ高額の〝構想〝なのだから、様々な市場調査結果などを挿入した相当に分厚い企画書が仕上がっているはずだ。それなのに、そうした成果物がないというのはどう考えても不自然極まりない。

本間氏が指摘しているもうひとつの疑問点は、請求書が博報堂の正式な請求書式ではなく、エクセルの書式になっている点である。それが意味することについて、本間氏は次のように解説している。

 正式な書式で請求しなければ経理システム上は記録に残らない。つまり、架空請求でも何でもできる。内閣府は架空請求に従い、代金を支払ったことにして、裏金を作ることも可能になる。

このように本間氏は、構想費6700万円の中身と、請求書の書式そのものを疑問視している。

◇『ジャーナリスト』

『ジャーナリスト』(日本ジャーナリスト会議、3月25日)の機関紙には、筆者(黒薮)が記事を寄稿した。タイトルは、「博報堂と内閣府、公金使い放題 新聞広告だけで20億円 見積書もなく口頭とメモで」。

この原稿は、内閣府や省庁から博報堂に対して不自然に高額な国家予算が支出されている問題を指摘したものである。
たとえば2007年6月8日、民主党の末松義規議員は外務委員会で、環境省が博報堂に対して3年間で約90億円の国家予算を支出していた事実を追及している。

2009年に横浜市で開かれた「開国博Y150」と題する博覧会では、博報堂が企画を請け負い、約62億円を請求していたことも分かった。しかし、博覧会は不人気で34億円もの未払金が発生し、横浜市議会などで大問題になった。これが中田前市長が辞職した原因と言われている。

さらに郵政公社が民営化された時期、分社化された郵政4社のPR業務を博報堂が一手に請け負い、2年間で368億円の広告が契約書なしで発注された。(朝日新聞、09年10月4日)その背景に、博報堂による接待があったことも、総務省の報告書で明らかになっている。

今後、博報堂が発行している請求書そのものに対する疑惑を調査していく必要があるだろう。博報堂の内部にいた本間氏も、「有り得ない請求書」と言っているわけだから、過去にさかのぼって全部調査する必要がある。