1. 内閣府から請け負った博報堂の業務、契約書の仕様と乖離した業務内容で高額請求

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2017年01月23日 (月曜日)

内閣府から請け負った博報堂の業務、契約書の仕様と乖離した業務内容で高額請求

省庁と博報堂の取り引きの実態を調査する中で、契約書の内容と実際の業務が乖離していることが分かった。それは「成果物」の検証で判明する。

たとえばウエブサイトの構築を500万円で制作する契約を結んだとする。この場合、成果物の検証とは、制作者が完成させたウエブサイトが契約書の仕様どうりに作成されたかどうかという点である。

しかし、その成果物には非常に曖昧な要素がある。ひとつの例を挙げて説明しよう。

◇6700万円の内訳は不明

メディア黒書でたびたび取りあげている情報公開資料のひとつに、内閣府が博報堂との間で結んた平成27年度の「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」の契約書とそれにともなう請求書がある。

■政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等

契約額は約6700万円である。ただし、内閣府は、この金額のすぐ下に、「契約単価 別紙契約単価内表のとおり(消費税別)」 と記されているので、約6700万円とは、別にそれぞれの業務の単価に従って、臨機応変に増額請求できると主張している。

そこで筆者は、まず、6700万円の契約額が具体的にどのような業務に対するものであるかを説明するように内閣府に求めた。

◇国家予算を次々と支出

内閣府の説明は、6700万円は構想費に該当するというものだった。PR業務を進めるために、内閣府の職員と博報堂の職員がほとんど毎日集まって、博報堂の社員が広報戦略についてアドバイスをしていたという。

その結果、莫大な額の広告費を出費するに至ったのである。(落札価格を約8億円オーバー)しかし、これは基本的におかしな論理である。博報堂にしてみれば、なるべく多くの仕事を受注したいわけだから、内閣府が広告を多量に出稿する方向性でアドバイスをするだろう。公共事業の場合、構想を相談するのであれば、利益を受ける者とは関係がない第3社に依頼しなければおかしい。

念のために、わたしは博報堂の社員とほぼ毎日、打ち合わせを行った事実を示す記録が残っているのかを内閣府に尋ねてみた。その結果、そのようなものは何もないことが判明した。

打ち合わせを行った記録も残っていなければ、打ち合わせで何を決めたかを示す記録も残っていない。つまり、口頭の話し合いだけで、国家予算から博報堂に約25億円もの仕事を発注していたのである。

このケースでは、「成果物」に該当する構想案の実態が示されないまま、莫大な国家予算が動いているのだ。内閣府が主張する構想費を何に使ったのか、何の記録も残っていない。

わたしは、内閣府に「このような方法を今後も続けるのか?」と質問していみた。内閣府からは、続けるという返事が返ってきた。

◇契約書の仕様を無視

ちなみに契約書に添付されている仕様書によると、広告の年間契約段数は次
のようになっている。

○ブランケット判 70紙 各59段
○タブロイド判   1紙  76段

しかし、実際に出稿された段数は、たとえば中央4紙(朝日、読売、毎日、産経)の場合、次のようになっている。

朝日:94.5段
読売:94.5段
毎日:94.5段
産経:94.5段

契約段数を大幅に超えているのだ。若干のオーバーであれば、許容範囲だが、大幅に超過している。

また、広告の仕様は、契約により次のようになっているが、実態は異なる。

○ブランケット判
全15段×2回(内、1回は4色カラー広告)
全10段×2回(内、1回は4色カラー広告)
全7段×2回(内、1回は4色カラー広告)
全5段×2回(内、1回は4色カラー広告)

○タブロイド判
全11段×6回(内、1回は4色カラー広告)
全5段×6回(内、1回は4色カラー広告)

たとえば、ブランケット判の全15段広告についていえば、4色カラーの15段広告を1回掲載、モノクロのものを1回掲載することになっているのに、いずれもモノクロの広告で、カラーのものは掲載されていない。

10段広告は、一度も掲載されていない。7段広告は、1度掲載されているだけだ。これに対して5段広告は、13回掲載されている。さらに契約書にはない、半5段の広告が2回掲載されている。

※ただし、8月から11月にかけて四国新聞、北海道新聞、山口新聞、山梨日々新聞に掲載された「輝く女性応援会議」の広告については、段数や仕様のデータがないので、考慮に入れていない。

これらの事実から、原則的に契約書に沿った仕事をしていないことが分かる。途中で仕様を変更しても、その根拠となる書面が存在しない。表向きに契約額や仕様などを決めた上で、博報堂のアドバイスに従って、次々と後付けで国家予算を引き出してきた事実が確認できるのだ。

このような手口を内閣府と博報堂は、平成24年度(2012年度)から繰り返してきたのである。

そして2016年1月には、阪本和道審議官が、退官の半年後、博報堂に天下っている。この人物は、内閣府の時代に広報の仕事にもかかわっているので、事情を聞いてみる必要があるだろう。