1. 博報堂事件(第2ステージ・公共機関編)の視点、博報堂が内閣府に送付した契約書と請求書を分析する9つの視点

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2016年11月21日 (月曜日)

博報堂事件(第2ステージ・公共機関編)の視点、博報堂が内閣府に送付した契約書と請求書を分析する9つの視点

サマリー】博報堂事件の第2ステージ(公共機関に対する博報堂の不正疑惑)で重点的に調べる項目を、内閣府から入手した次の書類を例に明らかにしておこう。現時点では検証を必要とする異常が9項目ある。これらの項目は、現在、博報堂と取引をしている民間企業に対して、注意を喚起するメディア黒書の報道目的とも合致している。

例として紹介するのは、次資料のである。

■2015年度分の博報堂から内閣府に対するPR活動に関する請求書

2015年度の内閣府と博報堂の年間契約額は、約6700万円である。(資料の27ページ参照)これに対して請求額の総計は、約20億3478万円である。約20億円の過剰請求となっている。しかも、過剰になった請求分の支出の根拠となる見積書などの紙面は一切存在しない。

この事実を前提に、資料の特徴を手短に解説してみよう。

◇9項目の疑問点

請求書に日付がない。もっとも、内閣府の受領印は各月ごとに押されているが、本当に受領直後に刻印したものであるという保証はない。と、いうのも2016年度分の請求書を入手した際に、新聞広告に対する請求書が1枚もなかったので、内閣府の職員に事情を問い合わせたところ、新聞広告の請求書は、年度末にまとめて送られてくるという説明を受けたからだ。これが慣行になっているとすれば、2015年度も年度末にまとめて請求書を受け取った可能性が高い。
当然、受領印は各月の請求書ごとに日付けを変えて刻印した疑いがある。少なくとも2016年度の処理方法が慣行であれば、受領印の日付けを変更した可能性がある。

請求書に管理ナンバーが刻印されていない。これはシステム監査を受けていない証である。小企業は別として、一定の規模を持つ企業であれば、通常は見積書の段階から管理ナンバーを付番して、コンピュータで経理書類の管理をおこなう。

 博報堂は東証一部上場の博報堂DYホールディングスの主要な子会社である。それにもかかわらず、このような請求が長期間に渡って行われ、会計監査もシステム監査もなされていない可能性もある。これは大きな問題で、東芝の粉飾決算の事件同様に、東証や監査法人の責任問題に発展する可能性がある。

断言はできないが、上記当該の請求書は民間企業に出しているドットプリンタ出力ではないようだ。エクセルやワードのレーザー出力である可能性が高い。民間企業に出している請求書とは書式や紙質、それにフォントが明らかに異なる。

  テレビCMの放送内容と請求価格が全て墨塗りにされている。これはあまりにも不自然だ。新聞広告に関しては、個々の新聞社に対する請求額は、黒塗りになっているが、少なくとも総額は公開されている。ところがテレビCMの場合は、総額も隠されている。

内閣府に対する2015年度のPR関連事業の契約件数は、博報堂以外の広告代理店を含めると、全部で32件あるのだが、このうち博報堂との契約だけが、契約額と請求書の額が大きく異なっている。異常と評価できる。その差異は、すでに述べたように約20億円である。

博報堂以外の広告代理店との取引に異常がないということは、契約金額を大幅に上回って支出することが、内閣府の取引慣例ではない証である。博報堂のケースだけが特異なのだ。

博報堂は基本契約書の多数の条項にも違反している。第1条と2条は、仕様書に基づいた業務を行い、その対価を支払うことを規定しているのだが、対価が20億円も過剰になっている。また、第10条、第11条、第12条は検品や請求を規定に従って速やかに進めることを明記した条項だが、請求書そのものが年度末に提出されていた高い可能性があるわけだから、これらの条項にも反している。

請求を裏付ける契約書や見積書が存在しない。契約書については形の上では存在するが、請求金額が契約金額を約20億円上回っているわけだから、契約内容がまったく反映されていないことにある。支出の根拠にはならない。実質的には、契約書は存在しないと考えるのが妥当だ。

請求内容そのものにも、架空や不正請求の疑いのある。たとえば2015年3月10日に岩手日報、河北新報、福島民友、福島民報の4紙に掲載した「東日本大震災から被災地の復興に向けて」と題する広告は、7段のスペースであるにもかかわらず15段(全面)のスペースで請求している。他にも同じケースがないか、調査する必要がある。

民間の広告価格の相場から考えて異常に高額な新聞広告の価格である。また版下制作費(新聞広告デザイン撮影、費用)に民間企業への請求と比べて異常に高額なものがある。

博報堂は、疑惑だらけの広告料金の請求行為を過去に日本郵便でも行っており、総務省のガバナンス調査委員会が調査を行った。そして報告書が公表された。それを受けて、総務省から博報堂の取引先だった日本郵便へ改善命令が下された。さらにアスカコーポレーションとの取引(博報堂事件の第1ステージ)の中でも、同じトラブルが発生して、アスカが約63億円の大型訴訟を起こしている。

日本郵便への契約書のない請求が問題化して、朝日新聞などが報道したにもかかわらず、博報堂は敢えて民間や内閣府に対して全く同様の請求を繰り返している。それは何故なのか、当然、郵政事件の再調査と再検証が不可欠になる。

防衛省や他の省庁でも不自然な請求事例が発見されている。博報堂は公金と日本国民を喰いものにしている疑惑がある。