1. 博報堂事件のCM「間引き」疑惑、CM10桁コードに使用について電通と東急が「衛生放送のCMでも使う」とコメント

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2016年08月03日 (水曜日)

博報堂事件のCM「間引き」疑惑、CM10桁コードに使用について電通と東急が「衛生放送のCMでも使う」とコメント

 

博報堂事件の重大な関心事のひとつに、アスカコーポレーションを広告主とするテレビCMが多量に「間引き」されていた疑惑がある。

※事件全体の構図については、ここをクリック

CM間引きとは、広告主から料金だけを徴収して、実際にはCM放送をスキップする不正行為で、1990年代の後半に福岡放送、北陸放送、静岡第一テレビで発覚して大問題になった。そこでテレビ・広告の関係者が、再発を防止するために、コンピュータがCM「間引き」を監視するシステムを開発・導入した。

それは人的な作業を排したシステムで、コンピュータが人間の不正を監視する画期的なものだった。以後、CM「間引き」は、一切できなくなったというのが、放送界の常識となった。

◇10桁CMコードが意味するもの

CMが放送されると、自動的に10桁のCMコードが放送確認書に印字される。もちろん災害時などの緊急放送でCMが放送できなくなると、放送確認書に、10桁コードは表示されない。このCM10桁コードは、CMが放送されたか、されなかったを判定する唯一の「証明書」と言っても過言ではない。

この場合、放送できなかったCMは、他の時間帯に割り当てられる。その際、償いの意味を込めて、放送回数を増やすなどの「救済措置」が取られる。いわゆる「ペナルティー・サービス」である。

博報堂事件で問題になっているのは、CMコードのないCMが少なくとも1500件も発見されたことである。その大半は、衛星放送におけるCMに集中している。特に著しいのは、スーパーネットワーク社のケースで、現在の段階で、CMコードがないものが900件を超えている。

この問題について、スーパーネットワーク社は、CM「間引き」を否定している。と、なれば放送されたことが前提になるわけだから、当然、「ペナルティー・サービス」も行われていない。

わたしは現段階ではCM価格の調査は行っていないが、広告関係者によると少なくともCM一件につき制作費を含めて50万円ぐらいの料金が請求されるという。900件だと4億5000万円にもなる。

請求の方法は、この事件の特徴である、後付け見積書による請求である。(詳細については、ここをクリック)

◇スーパーネットワーク社とCMコード

7月13日、筆者はCMコードが非表示になった放送確認書について、スーパーネットワーク社に問い合わせた。CMコードが非表示になっている理由について、同社は、民放連に加盟していないから、使用義務はない、と答えた。

会話の意訳は次の通りである。

(最初は、取材拒否を表明した。それから博報堂と相談してから、回答すると、答えた。実際に、[おそらく相談後]先方から電話があった)
スーパーネットワーク:黒薮さんでしょうか。

黒薮:はい、わたしです。

スーパー先ほど問い合わせがありました放送確認書の件ですが、今、社内で確認しまして、・・10桁コードがなぜないかということですが、基本的に全スポンサーに関してですが、民放連に弊社が加盟していないからです。加盟していないと、10桁コードの義務づけがないものですから、今まで全部、素材と名前で放送確認書を作成してきました。ですから最近、記載していないというよりは、今までがその通りで、10桁コードなしでの素材の確認書をお送りしていました。

黒薮:そうすると放送はされていたということですね。

スーパー:はいそうです。

黒薮:民放連に加盟していないからコードがないと。

スーパー:はい。義務づけがないものですから。ただ、スポンサー名と素材名は記載して・・

黒薮:(アスカ以外の)他社についても、やはりCMコードはないということですね。

スーパー:はい。

◇衛星放送協会の見解

民放連に加盟していない放送局は、CM10桁コードを使っていなのだろうか?この点を調査するために、わたしは、スーパーネットワーク社が加盟している衛星放送協会に問い合わせてみた。

結論を先に言えば、衛星放送協会は、ガイドラインを設けて放送確認書を発行し、そこに人的な手を加えることはなく、放送確認書をスポンサーと広告会社に提出するように指導しているとのことだった。民放連に加盟していない放送局が、CM10桁コードを使っていないということではない。

会話の意訳は次の通りである。

衛生放送協会:黒薮様のおたくでしょうか?

黒薮:はい、わたしですけど。

衛星放送協会:お電話の方をいただいておりまして。

黒薮:ちっとお尋ねしたいことがありまして。

衛星放送協会:はい。

黒薮:CMの間引き問題が出ていますが、そちらの協会の方で防止策など取られているようであれば、教えてほしいのですが。

衛星放送協会:われわれの方ではガイドラインを設けておりまして、放送確認書を発行しています。各社におかれては、そこに手を加えることはなく、きちっと放送されものを放送確認書でスポンサー様に、あるいは広告会社様にお渡ししています。

黒薮:10桁コードに関して、民放連などはCMの10桁コードを使うように徹底しているということなんですが、そちらでも・・

衛星放送協会:こちらの方でも、10桁コードを使用するように推奨して、各加盟社を指導しています。

黒薮:分かりました。この点だけを確認させていただきたかったもので。

◇電通と東急の見解

一方、CMに関する業務では中心的な位置にある広告代理店は、CM10桁ーコードに関して、どのような扱いにしているのだろうか。電通と東急エージェンシーに問い合わせてみた。

これも結論を先に言えば、両者とも衛星放送のCMに関しても、CM10桁コードは使っていると回答した。

電通との会話の意訳は次の通りである。

質問の内容:広告代理店に対して、貴社が制作する衛星報道のCMには、10桁CMコードを使っているか?

【電通】
黒薮:衛星放送のCMについて調べていますが、博報堂さんが作ったCMで、CMの10桁コードが入っていないものがたくさんあるのですが、電通さんの場合は、この10桁コードを使われていますか。他社と比較したいと思いまして。

電通:はい、基本的には使用しておりますが。

黒薮:そうですか。

電通:はい。

黒薮:衛星放送でも使われているということなんですね。

はい:BSの放送で使用しています。

【東急エージェンシ】
一方、東急エージェンシーとの会話の意訳は次の通りである。

質問の内容:広告代理店に対して、貴社が制作する衛星報道のCMには、10桁CMコードを使っているか?

東急:10桁のコードの使用ということなんですが、使用しています。

黒薮:使用されているということですね?衛星放送でも使用されているということですね。

東急:そうですね。

黒薮:ありがとうございました。

◇CMコードの使用はテレビ界の常識

CMコードの使用に関してわたしは、業界団体も含め、随分たくさんの関係者を取材したが、そこから分かったことは、テレビ界では、CMコードの使用はすでに常識になっている事実である。それゆえに、いまの時代にCMの「間引き」はあり得ないというのが、テレビ関係者の常識として定着している。

ところが今年に入って、博報堂が制作したCMが多量に「間引き」されてきた疑惑が浮上しているのである。

さらにCMコードが表示された放送確認書にも別の疑惑がかかっている。沖縄テレビ放送の放送確認書が偽装されていた疑惑である。その根拠については、裏付け資料を入手しているので、改めて詳細を報告しよう。