1. 取材拒否の博報堂が発行した「後付け」見積書の疑問、代筆放送確認書とCMコード非表示の整合性はあるのか?

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2016年07月22日 (金曜日)

取材拒否の博報堂が発行した「後付け」見積書の疑問、代筆放送確認書とCMコード非表示の整合性はあるのか?

博報堂に対して繰り返し取材を申し入れているが、今のところ応じる気配はない。21日も広報部に取材を申し入れたが、係争中を理由に断られた。どうやら取材には応じないという社の方針があるのではないか。

取材対象の事件は、博報堂とアスカコーポレーションの係争である。昨年の12月に博報堂がアスカコーポレーションに対して約6億円の損害賠償を起こしたのに対して、今年5月、アスカコーポレーションも逆に約15億円の過払い金の返済を求めて提訴した。

その中で放送確認書のCMコードが非表示になっている事実や、博報堂がテレビ局に代って放送確認書を代筆していた事実、それに不可解な見積書の存在などが輪郭を現わしたのである。

◇『ZAITEN』から『紙の爆弾』まで

わたし以外の記者も博報堂から取材を拒否されているようだ。博報堂とアスカコーポレーションの係争を記事にした紙媒体は、これまでのところ『ZAITEN』(5月号)、『月刊TIMES』(6月号)、『週刊実話』(6月30日)、それに『紙の爆弾』(7月号)の4社だが、取材拒否に関して、それぞれ次のような記述がある。

原告である博報堂は本誌取材の申し込みを拒否した。(ZAITEN)

  筆者は本稿執筆にあたってS氏本人にも取材を試みたが、同氏の回答は「全て本社博報堂の法務部に任せているので、そちらにお聞きください」だった。(紙の爆弾)

 博報堂からは筆者の質問に対し、原稿締め切り時間までに回答がない。(TIMES)

 なお、これらの内容を確認したい旨を博報堂広報部へ申し入れたが、係争中を理由に拒否された。週刊実話)

博報堂は明らかにメディアの取材を嫌っている。

◇「事前御見積書」の怪

わたしはこれまでに博報堂に対して繰り返し書面や電話で取材を申し入れてきた。21日は、取材したいテーマを2点に絞って伝えた。放送確認書の中に博報堂がテレビ局に代って代筆したものが多数存在するので、その経緯を教えてほしいという点がひとつ。他のひとつは、見積書の日付けが後付けになっている疑問である。

まず、まず博報堂がテレビ局に代って代筆した放送確認書が存在する事実から説明しよう。改めて言うまでもなく、放送確認書は、テレビ局がCMなり番組を放送した後、みずから発行するものである。代筆はあり得ない。ところが博報堂が代筆した放送確認書が数多く存在するのだ。

次のPDFがその証拠である。朝日放送のものだけでも、少なくとも22枚ある。

■代筆放送確認書の証拠

2つめの取材点は、見積書が後付けになっているものが大量に存在する事実である。「見積書が後付けになっている」と言われても読者はピンとこないかも知れない。そこで実例を上げて説明しょう。

博報堂が発行した次の見積書の「赤→」の箇所に注意してほしい。


発行日は5月31日になっている(①→)。次にCMが放送された月日に注視してほしい(②→)。たとえばモーニングバードという番組枠の中で、5月4日、11日、18日、25日にCMを放映することが明記されている。

読者はこの見積書の異常さが理解できるだろうか?本来、見積書はCMを放送する前に提示しなければならない。上記の例で説明すれば、5月4日、11日、18日、25日より先の時期、おそらくは少なくとも1カ月前の4月中に提示しなければならない。

ところが実際はそうはなっていない。「①→」が示すように、博報堂は5月31日に、5月に放送する予定の番組の見積書を提示しているのである。これ自体が尋常ではない。矛盾している。

当然、アスカとしては、5月4日、11日、18日、25日に本当にCMが放送されたのか、確認の方法がない。特に遠方のローカル局のCMなどは、確認が極めてむつかしい。

この問題についてアスカを取材したところ、やはりわたしと同じ懸念があり、事前に見積書を提出するように博報堂に申し入れていたという。それに応えて博報堂は、「事前御見積書」を発行したこともあるという。次に示すのが証拠だ。

見積書は、事前に発行するものであるから、「事前御見積書(2009年4月30日)」を発行したこと自体、それまでは事前に「見積書」を発行していなかった証である。

が、その後の年度の見積書を検証したところ、やはり従来通りの後付け「見積書」になっている。その結果、膨大な数の後付け「見積書」が存在するのだ。

◇2人のキーパーソン

さて、放送確認書がテレビ局以外の人力で代筆されていたり、放送確認書にCMを放送したことを立証するCMコードが記載されていないものが多数存在する事実が一極にあり、他方に後付けの見積書が発行されていた事実は、何を示唆するのだろうか。

改めていうまでもなく、それは後付け「見積書」に「予定」として明記されていたCMや番組が架空であった疑惑である。つまり放送されていない疑惑である。放送されていないゆえに、代筆された放送確認書が存在したり、CMコードが無表示になった放送確認書が存在する可能性である。

わたしが取材により博報堂に確認したいのは、この点なのである。

一方、アスカによると後付け見積書の謎は、博報堂の担当者とアスカの南部社長の関係を検証することで見えてくるという。

両者はおそらく法廷で本人尋問に立つことになるだろう。両者が事件の真相を解明するためにキーパーソンであることは間違いない。どちらが欠けても、事件の全容は明らかにならない。