1. 前田朗氏がM君リンチ事件の大阪地裁判決を批判、被告弁護士らにも苦言、「人権侵害を許さない職業倫理をどう考えるのか」

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2018年05月17日 (木曜日)

前田朗氏がM君リンチ事件の大阪地裁判決を批判、被告弁護士らにも苦言、「人権侵害を許さない職業倫理をどう考えるのか」

『救援』(5月10日号)に、東京造形大学の前田朗教授(日本民主法律家協会理事、在日朝鮮人人権セミナー事務局長)が、一文を寄せている。「M君リンチ事件」の大阪地裁判決(3月19日)についての評論である。

その中で前田氏は、判決を厳しく批判すると同時に、被告弁護士らに対する不信感を露わにしている。

周知のようにこの裁判は、在日韓国人に対する差別に反対している広義の「しばき隊」、あるいはカウンターグループの内部で起きたリンチ事件の被害者Mさんが、現場にいた5人の「隊員」に対して、損害賠償を求めたものである。判決では、損害賠償が認められMさんの勝訴だったが、共同不法行為は認められなかった。そのために原告側は、実質的には敗訴と受け止めている。

Mさんが受けた暴行のすさまじさは、「しばき現場」の音声記録として残っている。身の危険を感じたMさんが、秘密裏に録音していたのである。

なお、M君がリンチを受けた原因は、組織内の金銭疑惑をめぐるトラブルである。隊員の1人が極右グループから金銭を受けたとする噂である。

裁判の争点は次の通りである。前田氏の評論から引用しておこう。

争点は、被告らの共同不法行為責任の存否(暴行の態様及び事前共謀若しくは現場共謀の有無又は教唆もしくは幇助の有無)、及び損害の発生及びその額である。

前田氏は争点を明らかにした上で、次のように判決を評論している。(注:格段落間のスペースは、便宜上、黒薮が設けた)

    第一に、判決文からは事件現場の様子を具体的にイメージしがたい。カウンター席九席の狭い店舗において原告と五人の被告がどのように行動したのか。暴行現場である通路が店舗とどのような関係にあるのか判決文からは合理的な人間行動がなされたとは読めず、不自然な事実認定に思える。

 第二に、判決文からは、被告五名らの人格と行動がいずれもちぐはぐで、統一的な人格の持ち主による言動を読み取ることができない。結論を先取りして説明するために強引な認定がなされたのではないだろうか。

 第三に、損害賠償額がABにそれぞれ80万円という、理解しがたい低額になっている。録音記録からは一方的暴行が数十分続いたことがわかるが、判決文の認定でさえ「20回程度殴打し、1回足蹴りをするなどの暴行」である。これで80万円の損害賠償で済むのだから、被告らが判決当夜に「祝勝会」を開いたのも頷ける。判決は「暴力のススメ」に堕していないだろうか。

 もう1点、判決文から読み取れるのは被告Cの人格である。長時間に及ぶ一方的暴力の現場に居ながら、暴力を止めることも立ち去ることもせず、それどころか「顔面は、赤く腫れ上がり、出血していた」原告に対して「まあ、殺されるなら入ったらいいじゃう」と恫喝したのがCである。唾棄すべき低劣さは反差別の論理を損なうものである。

  私は、在特会に対する反ヘイト裁判において、Cの弁護人から依頼を受けて裁判所に「ヘイト・スピーチの被害に関する意見書」を提出した。それだけに本件訴訟の経緯と内容を見ると脱力感に襲われる。被告らの弁護人には知りあいが多い。かねてより敬愛してきた弁護士たちであるが、彼らはいったい何のために何をやっているのだろうか。依頼人のために仕事をしただけかもしれないが、あまりに情けないという自覚を有しているだろうか。差別と暴力に反対し、人権侵害を許さない職業倫理をどう考えるのか。(■全文はここをクリック)

カウンターグループは「市民運動」や野党(立憲民主党、共産党)とも共同歩調を取っている。当然、これらの関係者も、この事件を綿密に検証すべきだろう。そして問題があれば、軌道修正しなければならない。さもなければ日本の革新勢力は内部から分断されてしまうだろう。

・「かかってこいや!へたれ!」
・「訴えるもんなら、訴えてみい!」
・「エル金さんの代わりに殴っていいか?」(のあとに「パーン」)
・「殺されるから(店に)はいってきたんちゃう?」
・「京都朝鮮学校の弁護団?お前の味方になってもらえると思うか?」
・「朝鮮学校のガキらの前で言えるんかこら!」
・「めっちゃ不細工やわ(笑)」(M氏の腫れ上がった顔を見て