1. 東京オリンピックの政治利用、共謀罪法案の何が最も問題なのか?

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2017年06月05日 (月曜日)

東京オリンピックの政治利用、共謀罪法案の何が最も問題なのか?

共謀罪法案の成立が秒読みの段階に入っている。なぜ、これが危険な法案なのか、筆者なりに指摘してみよう。

内心の自由を侵害するとか、テロ集団の定義があいまいでどうにでも解釈できるとか、監視社会になるとか、共謀罪に関連してさまざまな問題点が指摘されているが、核心はひとつである。従来の刑法の法理が完全に崩壊することである。その他の問題は、枝葉末節にすぎない。

日本の刑法は、例外はあるものの、犯罪を実行した段階で処罰する基本原則がある。犯罪の段階には、時系列でいえば「共謀」「予備」「未遂」「既逐(実行)」の4つがある。そして、現在の刑法で処罰が可能なのは、「既逐(実行)」の段階である。

たとえば、知人と「あいつを記事で批判してやろう」と話し合った(共謀)段階では、名誉毀損罪で処罰することはできない。それが基本原則になっているが、殺人など重大な犯罪に関しては、例外的に「予備(準備)」の段階(たとえば武器の購入)で処罰できる。しかし、このような例外に属する犯罪は、極めて限定されている。それが正常なかたちなのだ。

ところが自民党と公明党が成立を目指している法案では、名誉毀損、著作権違反など、277もの犯罪について、「共謀」の段階で取り締まりが可能になるのである。これでは「既逐(実行)」の段階で処罰する現在の刑法の基本原則が完全に崩壊してしまう。

こんな法体系を持つ国は世界中どこにも存在しない。国連が日本の共謀罪法案を危惧しているゆえにほかならない。

【参考記事】国連プライバシー権に関する特別報告者 ・ジョセフ・ケナタッチ氏が共謀罪法案に懸念、安倍首相に書簡を送付

共謀罪法案が成立した場合、警察は容疑者が「共謀」した事実を立証する必要に迫られるわけだから、日本はスパイ国家へ向かわざるを得なくなる。恐ろしい事に、「密告者」は罪が減じられるというのだから、異常としか言いようがない。

東京オリンピックの政治利用もここまで極端になれば、ボイコットの声もあがりかねない。