1. 国際スタンダードからほど遠い安倍内閣の法改正、国連人権高等弁務官事務所などが勧告

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2017年06月01日 (木曜日)

国際スタンダードからほど遠い安倍内閣の法改正、国連人権高等弁務官事務所などが勧告

国連プライバシー権に関する特別報告者ジョセフ・カナタチ氏が、18日に共謀罪に懸念を表する書簡を安倍首相に送付したのに続いて、30日には、国連人権高等弁務官事務所のデービッド・ケイ氏が対日調査報告書を発表し、その中で、特定秘密保護法の改正などを勧告した。

 中でも「特定秘密保護法」について、記者の活動が萎縮しないよう法改正を勧告しており、国の安全保障に問題がなく、公共の関心があるとの信念に基づいた情報開示を行う個人に対しては、処罰されない例外規定を含むべきだとしています。また、メディアの独立性を強化するため、政府による介入の法的根拠となる放送法4条の廃止などを勧告しています。(TBS)

  日本の「表現の自由」や「知る権利」に懸念が示されていて、「政府がメディアに直接・間接に圧力をかけている」などと指摘している。また、政府がメディアに干渉する法的根拠になっているとして、政治的公平性を定めた放送法第4条を撤廃すべきだと勧告している。日本政府は報告書について「ほとんどが不確かな情報や憶測に基づいている」と文書で反論している。報告書は、日本政府の反論と合わせて、来週からスイスのジュネーブで開かれる国連人権理事会に提出される予定だ。(テレビ朝日)

ちなみに放送法第4条は、次のとおりだ。

第四条   放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一   公安及び善良な風俗を害しないこと。

二   政治的に公平であること。

三   報道は事実をまげないですること。

四   意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

第4条は、一見すると真っ当な条文のようにも思えるが、政府が言論に介入する口実となる。メディアの独立性を侵害する温床である。

そもそも客観報道とか、公正中立な報道は幻想である。何を報じ、何を報じないかは編集者が選択するものなのだ。従ってジャーナリズムの評価は窮極のところ、報道を通じて提示する主張が正しいかどうかで決まる。ジャーナリズムの原点は、自分たちの主張を書き、それを印刷して配布するビラである。それに政治的な中立性を求めるのはナンセンスだ。

◇グローバルなスタンダード

さて、ジョセフ・カナタチ氏もデービッド・ケイ氏も海外の識者である。しかも、大きな影響力を持っている。彼らが日本政府に対して警鐘を鳴らすことは、ある意味では、国境が消滅してきた証である。日本の極右化を自分たちの問題として捉えているからである。

すべてがグローバルなスタンダードになり始めているのだ。

小泉内閣の時代から本格化した日本の新自由主義=構造改革の導入は、あらゆるものを国際基準に近づけるための政策なのだ。もちろんそこでは多国籍企業の権益が最優先されていて、裁判員制度の導入や国際ビジネスに対応できる弁護士の養成など、随分見当違いなものも多数含まれているが、国境を撤去することを前提に動いているという1点についてだけは、評価できる。

◇世界に類をみない共謀罪

ところが安倍内閣の下で行われてきた日本の法改正に対して海外の識者から懸念の声があがっている。これは逆説的に言えば、安倍内閣が国際基準からすれば異常な法改正をやっている証にほかならない。

実際、現在、参議院で審議されている共謀罪のような極端な法律は、筆者の知る限りでは、どの国にも存在しない。「共謀」が発覚した段階で、逮捕が可能な犯罪を限定的に決めている国は、日本も含めてたくさんあるが、その対象犯罪を300近くに拡大しようとしている国は日本だけである。

このような法律が施行されれば、外国人も日本国内では政治の話はできなくなる。当然、企業活動も萎縮してしまう。どこでどう犯罪者にされるか、まったく予測がつかなくなるわけだから、たまったものではない。

ジョセフ・カナタチ氏やデービッド・ケイ氏が安倍政権に懸念を表明するのは、ある意味では当然のことなのだ。

筆者は、共謀罪法案が成立して、監視の目が厳しくなれば、多量の人材が海外へ流出する可能性が高いと考えている。そうでなくても、国境など実質的には消滅しているわけだから、日本は空洞化する条件下にある。

安倍首相は国際的な視点が完全に欠落している。

【写真】統一協会=国際勝共連合の機関誌に登場した安倍晋三首相